私は、スポーツ栄養を学び、時折スポーツを頑張るお子さんをお持ちの保護者と話をすることもありますが、「食事をとる時間がない」という話をよく聞きます。

 昼食時では昼練習があったり、次の授業や行事が入ると時間が足りなくなって、残してしまうケースがあるようです。休日の部活でも、練習時間を優先するがゆえに10分程度で食べなければならない、移動中に食べているということも聞きました。

 ご飯などの糖質は頭や体を動かすエネルギー源になりますし、おかずからとれるタンパク質は、体を作る重要なものです。十分に時間を取り、しっかり噛んで食べることができれば、消化もよくなり、栄養素の吸収もあげることができます。できれば、しっかり時間を確保したいものですよね。

 とはいっても、学校内では選手自身で時間を変えるのは難しいもの。それでは補食を持たせてみてはいかがでしょうか。

 高校生にもなると、自宅から離れた学校に通う子も多くいます。朝5時台に家で朝食をとり、長い時間電車で移動し、そのまま朝練に入る。そして、昼食まで何も食べずに過ごしてしまうと、6~7時間も空腹の時間が続きます。

 朝練で使われた筋肉は、傷ついた状態になっています。ここでご飯やパンなどの糖質やタンパク質を補ってあげると細胞が栄養素を取り込み、筋肉が修復されるのですが、空腹の時間が長く続くと、体は肝臓や筋肉に蓄えられているグリコーゲンをどんどん使って体を動かします。そして、今ある筋肉を分解し、エネルギーとして使ってしまうのです。

 1日の食事は、3回でとるよりも4、5回に分けてとったほうが、血液中に栄養素が十分ある状態になり、そこからエネルギーが使われるため、筋肉が分解されにくくなります。体を大きくしたいと考えている方は、補食を取り入れた方が体重が落ちにくく、しっかりした体が作られるでしょう。

 脳もエネルギーを使うので、補食をとると授業にも集中できます。私は学校の先生や指導者には、朝練の後におにぎりなどの補食をとる時間をぜひ確保していただきたいと思っています。

 我が家の息子が高校時代サッカー部に所属していたときは、お弁当を2つ持たせたり、お弁当におにぎりをプラスして持たせたりしていました。おにぎらずやいなり寿司なども食べやすかったようです。また、試合などで長く運動する時は、運動前や間にフルーツを食べさせるようにして、エネルギーが不足しないようにしていました。

抗酸化ビタミンとタンパク質を意識した秋のお弁当。左は焼き鳥にレンコン、ネギ、ピーマンを合わせ、タレにからめてご飯にのせました。右のお弁当に入っているサツマイモ、ニンジン、カボチャの塩きんぴらは、エネルギーも摂れて、ビタミンACEがそろいます
抗酸化ビタミンとタンパク質を意識した秋のお弁当。左は焼き鳥にレンコン、ネギ、ピーマンを合わせ、タレにからめてご飯にのせました。右のお弁当に入っているサツマイモ、ニンジン、カボチャの塩きんぴらは、エネルギーも摂れて、ビタミンACEがそろいます

夏の暑い時期は、よく冷凍したフルーツを保冷剤と一緒に入れていました。フルーツは、運動前や間にとると効率がよくエネルギーになるので使いやすかったです
夏の暑い時期は、よく冷凍したフルーツを保冷剤と一緒に入れていました。フルーツは、運動前や間にとると効率がよくエネルギーになるので使いやすかったです

ご飯に乗せた塩サバは、小さく切って一度に焼き、冷凍しておいたもの。凍ったまま入れると、食べる頃にはほどよく解凍されています。おにぎりには、梅干し+かつお節を合わせたものを入れて。梅干しはクエン酸が含まれ、疲労回復や腐敗防止、かつおからはビタミンB群が摂れます
ご飯に乗せた塩サバは、小さく切って一度に焼き、冷凍しておいたもの。凍ったまま入れると、食べる頃にはほどよく解凍されています。おにぎりには、梅干し+かつお節を合わせたものを入れて。梅干しはクエン酸が含まれ、疲労回復や腐敗防止、かつおからはビタミンB群が摂れます

 体を作るためには「食べる」というだけではなく、今ある筋肉の分解を防ぐという視点も重要なのではないかと思います。

藤木香織(大阪府堺市)

スポーツ栄養コンディショニングアドバイザー、調理師、2ツ星栄養コンシェルジュ®
アスリートやスポーツをする子どもの栄養相談、クラブや学校での講義、料理教室などを行う。
学生時代はサッカー部に所属していた男子のママ。