摂食障害などの心身の不調を理由に23歳で現役を引退した女子ハードルの元世界陸上代表、寺田明日香(28)は現在、7人制ラグビーで2020年東京オリンピック出場を目指している。陸上のトップアスリートだったとはいえ、接触プレーの多いラグビーの経験は浅く、食事管理をしながら体作りの真っ最中。筋力アップ、増量に向けて試行錯誤の日々を過ごしている。【聞き手・青木美帆】

 -ラグビーを始めた時のサイズは?

 寺田 168センチ、45キロ、体脂肪は7パーセント。出産(2014年)で色んなものを吸い取られてしまったようです。始めてから1週間後は、タックルを受けてマンガみたいにふっ飛ばされました(笑)。

 -そこからの体作りは?

 寺田 まずは体重を増やし、それから絞って筋肉をつけていくイメージです。ラグビーは筋肉だけでなく適度な脂肪も必要。タックルを受けたときの衝撃が違うので。

寺田の増量期の朝食。ご飯、パン、シリアル、餅と4種類の炭水化物をとる
寺田の増量期の朝食。ご飯、パン、シリアル、餅と4種類の炭水化物をとる

 -体重を増やす方法は?

 寺田 とにかく炭水化物とタンパク質。毎食どんぶりご飯におかず、さらに麺類、おにぎり、パン、プロテインなどをプラスしています。意図的に体重を増やす経験をしたことがなかったので、初めは大変でした。日本代表候補の合宿中は、食事を詰め込んで、最後は体を揺らして無理やり胃に落とし込むような感じです(笑)。今は、定食2人前くらいなら普通に食べられますし、チームメイトに「明日香さん、少なくないですか?」と言われることが気持ち良くなりました。

 -栄養素で意識しているものは?

 寺田 貧血持ちなので、鉄は意識しています。鉄はビタミンCと一緒にとると吸収率が上がるので、野菜やフルーツが欠かせません。また、ブロッコリーやカボチャといったβカロテンなどのビタミン、ミネラル類の含有量が多い緑黄色野菜をとるようにしています。

 -増量は順調でしたか?

 寺田 17年1月から日本代表候補の合宿に参加するようになり、1~2か月で6キロ増量、目標の58キロにかなり近づきました。しかし、5月に右足を脱臼骨折してしまい、3週間の入院で50キロまでダウン。骨の回復を待たずに体重を増やすとよくないということで、その後は徐々に体重を増やしていき、今は57キロほどになりました。

ラグビー7人制女子の強化合宿に参加した寺田明日香(中央)。左は桑井亜乃、右は大竹風美子(2017年1月20日)
ラグビー7人制女子の強化合宿に参加した寺田明日香(中央)。左は桑井亜乃、右は大竹風美子(2017年1月20日)

 -「食べることがつらかった」陸上時代と比べ、前向きになられた印象です。

 寺田 そうですね。自分でもびっくりです。出産と育児を経て、考え方が“ゆるく”なった気がします。それまでは神経質で、部屋に物が落ちていると気になって仕方なかったのですが、今は気にしません。色々なことを許せるようになったのが良かったのかなと思います。

 -現在の体作りの課題は?

 寺田 「目標体重に到達すること」「体重の増減を少なくすること」です。食べ続けないと体重は増えないので、頑張って食べてキープしなければなりません。筋力に関しては、陸上のおかげで下半身は強いのですが、上半身が課題。タックルに耐え、かつ速く走れる体を模索中です。

夕食はご主人が調理してくれることも。鉄をしっかりとれるようにと調理鍋も鉄製を使用している
夕食はご主人が調理してくれることも。鉄をしっかりとれるようにと調理鍋も鉄製を使用している

 -ラグビーでの目標は?

 寺田 目指すところは東京オリンピックと決めています。できるだけ国内の試合で活躍して、トップチームで使えると思ってもらえないと20年は見えてこない。そこに早めに食い込みたい。

 -最後にジュニア選手にメッセージを

 寺田 一番大切なのは朝、昼、晩と3食食べること。運動しているなら、特に朝ご飯をしっかり食べて欲しいです。大学時代に幼児体育を勉強しており、4歳~12歳を対象にしたアンケート調査を行ったところ、朝ご飯を食べる子と食べない子では、勉強でも運動でも能力に大きな差が出ていることが分かりました。食べないと睡眠時間を含めて約半日、栄養分をとっていないことになり、体内のエネルギーが下がる一方です。体重を増やしたくないという子も、朝ご飯を含めてバランスよく食べるようにしてほしいです。