春休みの期間を利用して、海外の小学生に栄養教育を行い、食べることの楽しさや和食の素晴らしさを広めてきた女子大学生がいます。津田塾大学学芸学部国際関係学科2年の渋谷明香(さやか)さんは、海外インターンシップ事業を運営する学生団体、アイセックのプログラムの一環として、2月7日から5週間、カンボジアの首都プノンペンの小学校で栄養教育を行いました。
カンボジアは急速に経済発展を遂げる一方で食生活が激変し、糖尿病などの生活習慣病患者の増加が深刻になっています。食事は米中心で野菜を食べる習慣があまりなく、特にプノンペン市内の家庭は比較的裕福なためか、子どもたちは授業の合間など小腹がすいた時に、すぐ売店でカップ麺や甘い炭酸飲料を購入するのが日常でした。
そんな中で渋谷さんは何を考え、何を伝えてきたのでしょうか。体験レポートです。
専門家不足、子どもの肥満も深刻
日本では、学校教育の中に、食育基本法を基盤とした子どもたちへの食育が組み込まれています。また栄養バランスのとれた給食が毎日届けられています。
しかし、カンボジアには給食制度がなく、栄養教育を行える教員や専門家が不足。その影響もあって、多くの子どもたちは学校内の売店で脂っこいスナック菓子や甘いジュースを日々のおやつとして、時には主食に置き換えて摂取しています。また、都市部は自動車やバイクの交通量が多く、十分な遊び場や運動場の確保が難しいため、子どもたちの肥満の問題も深刻です。
インターンシップ中、保護者を招いて、和食を試食してもらうワークショップを開催しました。提供したのは、かつお節だしと、だしを使ったレシピで「白菜とおだしの春巻き」「青菜のおひたし」「豆腐とワカメのみそ汁」など。カンボジアには「かつお節」や「だし」という概念がないため、レシピやかつお節を説明したチラシは、プノンペン大学の学生にカンボジアの公用語であるクメール語に訳してもらいました。
かつお節のうま味は現地の方々にも大人気。それを使ったメニューは塩分量が少なくてすみ、さらに栄養価も高いとあって、先生方にも好評でした。
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