<アスリートの摂食障害:原裕美子(上)>
女子マラソンの元日本代表で、長年摂食障害に悩まされてきた原裕美子さん(37)が、2日に行われた日本摂食障害協会主催のシンポジウム「世界摂食障害アクションディ2019」に登壇し、自らの体験を元に「1人で悩まないで。信頼できる人を見つけて早期治療をして欲しい」と訴えた。
執行猶予中に2度目の万引き
原さんは昨年2月、執行猶予期間中に万引きをしたとして逮捕・起訴され、12月3日に前橋地裁から懲役1年、保護観察付き執行猶予4年の判決を受けた。摂食障害からの窃盗症(クレプトマニア)によるものだった。
摂食障害は、食べ物を普通にとることができなくなる心の病気。大きくは、低体重にこだわる「拒食症(神経性やせ症)」と、異常な量の食物を食べては嘔吐や下剤を使用する「過食症(神経性過食症)」に分けられ、両方を繰り返す人も少なくない。一度なると完治するまで10年以上の長い月日がかかるといわれる。
18歳で発症、10年後に病気と知る
原さんは、京セラ時代の過度な食事制限から症状を発症していたが、それが摂食障害だと知ったのは、故小出義雄監督のユニバーサルACに移ってから。2010年、28歳のことだ。発病は18歳。10年もの間、1人で苦しんできた。
原 それまでは病気という認識はなく、自分の意志が弱いので、(食を)コントロールできないと思っていた。走りではあれだけ我慢できるのに、食べることに関しては(我慢)できないのか、ダメな人間だなと。もっと完璧な人間になりたいと。何でだろ、何でだろと、ずっと悩んでいました。
身長163センチ。同じ身長の女性の標準体重は56キロだが、5000メートル、1万メートルのトラックを走る時は44~45キロに、マラソンではさらに1キロ減らしていた。41キロになった時は、足に筋肉はあったものの、腕は小枝のように細くなった。
原 中学の恩師から「食べてるのか、やせすぎだろ」と言われましたが、調子の良いときだったので疑問に思いませんでした。(当時の写真を)今見ると、「気持ち悪い」と思うぐらいやせていた。
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