<キッチンは実験室(27):味覚の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。夏においしいスイカを食べるとき、どうして塩をかけるのかご存じですか? 「甘さを引き立てるから」と聞いたことがあるような、ないような…。今回は、前回に続いて「味覚の科学」を深掘りし、味の感じ方を科学的に説明します。

4つの味の相互作用

味覚には5つ、塩味、甘味、苦味、うま味、酸味の五味がありますが、以前もお伝えした通り相乗効果も生まれます。塩にだしを入れると、うま味が上がったり、コーヒーに砂糖で苦味が緩和されたりすることを「味の相互作用」と言います。

味の相互作用は、4種類あると言われています。

(1)対比効果
 2種類以上の異なる味を混ぜ合わせた時、一方の味が強く感じられる現象のこと。
 例:甘味+塩味=甘さを感じる(おしるこに塩、スイカに塩で甘さが強調)

(2)抑制効果
 2種類以上の異なる味を混ぜ合わせた時、一方の味が著しく弱められる現象のこと。
 例:甘味+苦味=苦味を感じにくくなる(コーヒーに砂糖を入れると飲みやすくなる)

(3)相乗効果
 2種類以上の同じ味をもつ物質を混ぜ合わせた時、相互に味を強め合う現象のこと。
 例:2種類のうま味=コンブ(グルタミン酸)とかつお節(イノシン酸)の合わせ出しで、うま味が格段に上がる

(4)変調効果
 2種類の違う味を続けて味わう時、後の味が変わる現象のこと。
 例:塩辛いものを食べた後、無味の水が甘く感じられる

スイカに塩をかけて食べるのは、(1)対比効果の作用で、甘さが強調されるためなんですね。「生ハムにメロン」「桃モッツアレラ」も、同じ対比効果の効果と言われています。

効果的な塩の割合

とは言っても、塩を入れれば入れるほど、甘さが強まるわけではありません。加える塩の効果的な割合は砂糖の濃度によって変わり、砂糖濃度が高くなると、塩の割合はより少ない時の方が効果があると言われています。

<おしるこ500gに対しての砂糖と塩の割合>

(1)10%砂糖水=食塩0.15%(砂糖50g、塩0.75g)
(2)25%砂糖水=食塩0.15%(砂糖125g、塩0.75g)…(1)と塩の量は変わらない
(3)50%砂糖水=食塩0.05%(砂糖250g、塩0.01g)…(1)(2)と比べて、塩の量が極端に減る。

(1)~(3)では、(3)が最も甘く感じられると言いますが、味覚の科学はまだ謎に包まれている部分が多いのも事実です。

抑制効果で塩味が薄らぐ

また、塩味+うま味の「抑制効果」によって、塩味が抑制される傾向にあります。岩塩よりも、うま味調味料の入った精製塩はあまり塩辛さを感じなかったり、イカの塩辛など塩分濃度は高いはずなのに、熟成発酵のうま味によって塩味を弱く感じられたりします。同様にハムやソーセージ、パンなども塩を多く使っているにもかかわらず、それほど塩味を感じないものもあります。これらは味の相互作用、「味のマジック」です。

次のページ味覚は男女で違いがある、加齢で味覚が落ちる