<キッチンは実験室(31):茶碗蒸しと卵の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。今回は秋の味覚のぎんなんや、うま味たっぷりのシイタケが入った「茶碗蒸し」に注目します。だしと卵があれば簡単にできるはずなのに、「す」(すき間)が立って失敗したことはありませんか?

固まる膨らむ卵の性質

まず、「す」の原因を探るために、卵の性質に着目してみましょう。調理科学でいうと、卵には3つの性質があります。

(1)熱凝固性
熱を加えると固まる力。卵焼き、以前紹介した「ゆで卵」もこの性質を利用したもの。

(2)起泡性
卵白を泡立てるとメレンゲができ、卵黄や卵白を泡立てるともったりするといったように、泡立って膨らむ力のこと。卵を加えた蒸しパン、シフォンケーキ、淡雪などはこの性質を利用したもの。

(3)乳化性
本来混ざり合わない油と水を結びつける働き。「マヨネーズの科学」で紹介。

上記のように、シフォンケーキにはベーキングパウダーが入っておらず、卵の力で膨らんでいます。卵を泡立て、加熱するとその気泡が温められて膨らみ、冷えて縮まる時に小麦粉の壁が支えになって膨らむのです。プリンや茶碗蒸しは、熱凝固性を利用したもの。材料を混ぜるときにで泡立ってしまう(起泡性)の「泡」こそが、「す」の正体なのです。

卵を固くする、軟らかくする

次に、卵の熱凝固性を見てみましょう。

先日、料理を始めたばかりの主人に「どうして卵焼きに牛乳(だし)を入れなきゃいけないの?卵をときほぐして、そのまま焼いてはいけないの?」と聞かれました。卵焼きにはだしを入れるものと思っていたので、とっさには答えられない質問でした。

正解を説明すると、「卵をそのまま焼くと固くなる」から、ふんわり仕上げるためにだしを加えて卵液を薄くするのです。オムレツや卵焼きを作るときは10%程度の液(牛乳、豆乳、だし)を加え、卵濃度を90%ほどに薄めて、出来上がりを軟らかくするのです。

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