<ラグビー流 Education(4)>

高校ラグビーの名門・桐蔭学園(神奈川)を率いる藤原秀之監督(51)に、「世代別の指導ポイント」第3弾として、高校生を対象にした話をうかがいます。

ラグビーがすべてではない

桐蔭学園は、花園の常連校で、毎年のように優勝候補に挙げられる。そんな中で藤原氏は言う。

藤原 どの山を目指すのか、生徒によって目標は違います。高校日本一を目指す者だけではない。その先を目指す者もいる。技量的なものも含め、それぞれ山の高さが違います。

約100人の部員を抱えつつ、各生徒に向き合う。

藤原 大事なのは、ラグビーがすべてじゃないということ。「やっていれば、いいことがあるだろう」ではなく、自分の意思でやる。例えば「うまくなりたいから」「好きだから」となるように導きたい。ラグビーじゃなくてもいい。部活をやりながら医学部や歯学部を目指す生徒もいます。その生徒が何を目指しているのかを考えます。

高校ラグビー神奈川県予選、厳しい表情で選手に指示を送る藤原監督
高校ラグビー神奈川県予選、厳しい表情で選手に指示を送る藤原監督

15~18歳はいわゆる「多感な時期」だ。

藤原 多感な時期だからこそ、さまざまなことに触れることが大事でしょう。ラグビーは痛みを伴い、規律を求められる。その意味では教育的にとてもいいかもしれません。私が指導している中では、ラグビーを通じていろいろ勉強することが、多い気がします。 そのためにはプレーや動きの選択について「なぜそれが必要なのか」、1つ1つの意味を伝えていくことが大切だという。

藤原 ラグビーは、身体的なコントロールも、メンタルのコントロールも重要なスポーツ。それが勝利につながる面もありますし、後の人生を豊かにする面があると思っています。

感情に流されず、自らをコントロールすることは大人として“有効”。ラグビーはポジションによる特性が際立ち、身体接触が激しいからこそ、自己制御能力が求められ、養われる。

また、高校生にとって大きな問題の1つは進路。

藤原 進路は最終的に本人の意思だと思います。

もちろん、本人の意思と適性、保護者の希望が合致しない場合もある。その“すり合わせ”である面談はなるべく早めにし、親身に提案をしている。OBはグレードの差はあれ、ラグビーに携わっている者が多いという。藤原氏は「うれしいですよ。どこかでつながっている。ラグビー界は結束が固い」と笑顔だった。

◆藤原秀之(ふじわら・ひでゆき)1968年(昭43)東京生まれ。大東大第一高でラグビーを始め、85年度全国選手権でWTBとして優勝。日体大に進む。卒業後の90年に桐蔭学園高で保健体育の教員、ラグビー部のコーチとなり、02年から監督に。同部は昨年度まで全国選手権17度出場。決勝進出6回、10年度優勝時のメンバーに日本代表の松島幸太朗ら。今や「東の横綱」と呼ばれている。

(2019年11月10日、ニッカンスポーツ・コム掲載)