<ラグビー流 Education(13)>
昨年のラグビーW杯(ワールドカップ)は、「ONE TEAM」などの“流行語”をいくつも生む社会現象になりました。名門・桐蔭学園(神奈川)を率いる藤原秀之監督(51)は、選手だけでなく、迎えた日本側の力も大きかったと強調します。日本の「おもてなし」の心が世界に通じ、大会成功の一因になったといえそうです。
新聞広告で感謝表す
藤原氏も今大会で最も印象的だったことの1つに、ウェールズ代表とキャンプ地だった北九州市のエピソードを挙げている。
藤原 公開練習時に(市民)1万5000人くらいが集まって、真っ赤に染まって、ウェールズ国歌や応援歌を歌っていた。このような受け入れ方、これまでのW杯であったでしょうか? この点でも日本は成功したと思います。
ウェールズ代表が4位で大会を終えた後、同国協会から北九州市民への感謝を込めた新聞広告が地元版に掲載された。
藤原 新聞広告まで出たのには驚きました。これも今までにないでしょう。お金もかかるし、W杯で先方からあらためて「ありがとう」と言われることなんて…。共感しました。ラグビーってすごいな、リスペクトしてくれたんだ、情熱が伝わったんだと。
後日、同市がウェールズの地元紙に全面広告で“返信”、絆は深まった。公開練習に集まって、歌った子どもにとっても一生の思い出になる。
藤原 精いっぱい歌っている姿は素晴らしかった。きっと気持ちよかったでしょう。こんな経験をした子どもたちが、将来どうなるのかも楽しみです。
◆藤原秀之(ふじわら・ひでゆき)1968年(昭43)東京生まれ。大東大第一高でラグビーを始め、85年度全国選手権でWTBとして優勝。日体大に進む。卒業後の90年に桐蔭学園高で保健体育の教員、ラグビー部のコーチとなり、02年から監督。同部は今年度で5大会連続18度目の全国選手権出場に。決勝進出6回、10年度優勝時のメンバーに日本代表の松島幸太朗ら。今や「東の横綱」と呼ばれている。
(2019年12月15日、ニッカンスポーツ・コム掲載)