「山登りトレ」で全身強化-。19年ラグビーワールドカップ(W杯)日本代表のFB山中亮平(31=神戸製鋼)が27日、近況を明かした。

新型コロナウイルスの影響でトップリーグ(TL)は中止。チーム練習場やジムは今月から使用停止に。3つの密(密集、密閉、密接)を避け、2週間前から自宅近くで登山を始めた。23年W杯フランス大会は35歳。半年前の大舞台での経験、得た教訓を糧に、先行き不透明な環境下でレベルアップを図る。

現在のトレーニング状況を説明する神戸製鋼FB山中亮平
現在のトレーニング状況を説明する神戸製鋼FB山中亮平

山中は鍛え上げられたふくらはぎの筋肉に手をやり、その少し下の箇所をさすった。「不思議ですよ。この辺りに疲労がくるんですけれど、上半身も結構パンパンになる。奥が深いんです」。そうほほえみながら、新たな試みを明かした。

「山登りを始めました。一番の理由は『密』を避けられることです。ランニングコースも、公園にも人がいる。普段は山登りをする時間も作れないので、ポジティブに挑戦しました」

2連覇を狙ったTLは第6節で打ち切り。6月下旬からの日本代表戦も開催は厳しい情勢だ。試合を想定し自宅でトレーニングを続けつつ、ひらめいたのが山登り。神戸市内の自宅近くには、幸い六甲山や摩耶山があった。2週間前から始め、26日に登った摩耶山で5回目。コースによるが、往復3時間半ほど。上りは1分間の心拍数で160~170を記録するといい、自らの体と“対話”する。

26日に山中がトレーニングの一環で訪れた摩耶山青谷道(本人提供)
26日に山中がトレーニングの一環で訪れた摩耶山青谷道(本人提供)

背景に大舞台で得た教訓があった。半年前、W杯日本大会で初の8強入り。プレーに自信をつけた一方で「脚をつるのが早かった」。歴史的勝利に貢献したアイルランド戦は先発したが、脚がつったことで後半9分に途中交代。その経験から「体の使い方を知るのは大切」と学んだ。山登りでは毎回、負担のかかる部位が違うと実感。下りは、上り以上に時間がかかる。1歩1歩、足を踏み出す位置や体重のかけ方を考えながら、変化を感じ取る。

大阪・東海大仰星(現東海大大阪仰星)高、早大、神戸製鋼で日本一。数多くの勲章を手に入れたが、直近の2年で発見があった。元ニュージーランド代表の世界的SOカーターと神戸製鋼でプレーし「DC(愛称)は38歳。年齢は関係ないと思わせてくれる。歳のせいにしない、ああいう選手になりたい」。23年W杯への思いも隠さなかった。

「35歳ですが、日本代表でW杯に出たい。ベスト8より上に行くために、優勝を目指さないといけない」 日本人離れした突破、パス、キック。全てを支えるのが体だ。限られた時間を無駄にしない。【松本航】

◆山中亮平(やまなか・りょうへい)1988年(昭63)6月22日、大阪市生まれ。14歳でラグビーを始める。東海大仰星高3年時に全国高校大会優勝。早大在学中の10年5月、アラビアンガルフ戦で日本代表初キャップ。SO、CTBが中心だったが、18年夏にFBへ転向。初めてのW杯となった19年日本大会は全5試合に出場。同学年のリーチ主将、SO田村らと8強に貢献。188センチ、98キロ。

○…山中は今季の打ち切りを決めたTLの判断に「仕方がない」と理解を示した。神戸製鋼は開幕6連勝で2位。ボーナスポイントの影響で勝ち点2差の首位パナソニックと、4月11日に埼玉・熊谷で直接対決を控えていた。感染拡大防止の重要性は十分に承知した上で「引退や移籍などもあると思う。このメンバーでできなくなるのは寂しいですね」とも吐露した。

(2020年4月28日、ニッカンスポーツ・コム掲載)