<キッチンは実験室(41・下):アイスクリームの科学>
「アイスクリーム」の構造や溶ける理由についてお話ししてきましたが、自宅でもアイスクリームを作ることがあると思います。ここでは手作りするときに気を付けたいポイント、市販のアイスとの違いについて、科学の側面から説明していきます。
材料に卵のあり、なしがあるのは
以前のコラム「生クリームの科学」でも紹介したように、牛乳の脂肪球は気泡を取り囲んでいます。そこに卵黄を加えると、卵黄の成分に含まれるレシチンという乳化剤の働きによって脂肪球が合体し、より大きくてクリーミーな塊になり、滑らかな食感が生まれます。
アイスクリームの材料に、卵が入っているものとないものがあります。また、全卵でも卵黄だけでもアイスクリームを作れますが、卵黄だけの方が水分量が少なくなるため、濃厚な味を生み出すと言われています。
一度、卵と牛乳を湯煎するのは乳化し、かつ卵や牛乳のタンパク質を混ぜた材料を安定化させるため。一方で、黄身を使わずジェラートのようにあっさり風味に仕上る場合もあります。
冷凍状態でかき混ぜると何が良い
アイスクリームのレシピの作り方に「カスタードを冷やし、その後一度固まったら30分ごとに繰り返し混ぜる」と記載してあるものがあります。単に冷凍するのではなく、定期的にかき混ぜることで、氷の結晶が壊れ、空気を含むことで食感が良くなるのです。
アイスクリームの3つの構成要素は「気泡(空気)」「乳脂肪」「氷の結晶」。気泡は氷の結晶に支えられています。
氷の結晶が大きいとざらざらした食感になってしまうので、自宅にアイスクリームメーカーがあると便利。絶えずかき混ぜてくれるので、小さな気泡を徐々に含ませることができ、大きな氷の結晶とならず、ふんわりと滑らかな食感となるのです。
浅いバットで冷やすのはなぜ?
アイスクリームメーカーがない場合、氷の結晶を小さくするには、凍らせる温度と時間が関係しています。結晶を小さくするには、なるべく急速冷凍すること。そのため、ステンレスやアルミなど熱伝導率が高く浅いバットに入れて表面積を大きくし、凍るまでの時間を短くするのです。実際に、市販のアイスクリームは氷の結晶ができないように、マイナス40℃まで冷やされたパイプの中で作られています。