<キッチンは実験室(42・上):うま味の科学>
皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。今回はだし(出汁)とうま味の話を紐解いてみたいと思います。
干しシイタケは冷水で戻すが
以前、「干しシイタケはなぜ冷水で戻す?」の回で紹介したように、だしのうま味には3種類あります。グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸です(貝に含まれているコハク酸を含む場合もあります)。シイタケにはグアニル酸、コンブにはグルタミン酸、かつお節にはイノシン酸が多く含まれます。
これらのだしの取り方はそれぞれ違い、シイタケは冷水からですが、かつお節はお湯から、コンブは水からとると言われています。なぜだか、考えたことはありますか?
コンブは高温すぎるとぬめりが
では、コンブから説明しましょう。コンブに含まれるグルタミン酸は温度が上がるにつれて溶けはじめ、60度程度の温度で最も溶け出しやすくなります。しかし、高温でグツグツしてしまうと弊害も出てきます。
コンブに含まれる成分の1つ、アルギン酸が高温によってぬめりを出してしまうのです。うま味は出るものの、上品なお吸い物などに使う場合、ぬめりによって風味が損なわれてしまいかねません。コンブは乾物のため、水につけ置くとしっかりと水分を吸って戻るので、一晩水に浸しておく(水出し)、または弱火で60度くらいまでゆっくりと煮出すことで、おいしいだしのみを出すことができるのです。
かつお節は低温だと生臭さが
次にかつお節に含まれるイノシン酸は高温で煮出します。かつお節は魚由来なので、逆に冷水や低温でゆっくり加熱すると生臭さやえぐみが出てしまうのです。かつお節は削り器などで削ったり、粉末状のものを使うので、水に戻す時間が不要。えぐみが出ないように、沸騰したお湯に入れたら煮ることなく、火を止めるだけでいいのです。最近はコーヒーを入れるような、だしポットもありますね。
次のページ唾液とうま味の関係と「おいしさ」の分類