<キッチンは実験室(43):ニョッキの科学>
皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。だんご状のパスタの一種、ニョッキ。潰したジャガイモ(カボチャ、サツマイモ)と小麦粉、塩を加え、一口大の大きさに丸めてゆでたイタリアの家庭料理です。なぜあの形なのか、どのジャガイモを使うとおいしくできるのか、今回はニョッキの秘密に迫ります。
さて、ニョッキを熱湯でゆでると、最初は下に沈んでいたのに段々と浮かんできます。これはどうしてか、分かりますか。
その理由は、ニョッキに含まれている空気です。手作りのニョッキの中には、小さな気孔がたくさんできています。ニョッキをゆでるとでんぷんが糊化して膨らみ、気孔の空気も熱で膨張します。また気孔の中の水分も水蒸気となって気孔をさらに押し広げます。こうして膨らんだニョッキは、体積あたりの重さが軽くなり、水の比重よりも軽くなって浮き上がるのです。
一方、市販のパスタの乾麺は、機械で圧力をかけて伸ばしたり、細い穴から絞り出したりして作られており、空気が入り込まない緻密な構造をしているため、浮き上がりません。
ニョッキに適したジャガイモは?
ニョッキの食感がもちもちなのは、でんぷんによるものです。以前、「お団子の科学」でも伝えたように、でんぷんが糊化することでもちもちの食感を生み出します。ジャガイモは私たちのエネルギーになりやすい炭水化物のでんぷんが多く含まれています。
そんなニョッキを作るときは、もちもちになるジャガイモの品種を選びましょう。でんぷんの含有率が高い方がもちもち食感になります。
例えば、男爵はでんぷんの含有率が15%なのに対し、メークインは13~14%と少なめです。そのため、男爵がポテトサラダやマッシュポテト、コロッケなどのように潰して使う料理や、肉じゃがや粉ふき芋など煮崩れしやすい料理に適しているのに対し、メークインはしっとりと粘りがあるため、形をきれいに残したい煮物などによく使われます。また、アメリカから輸入されるラッセルポテトは男爵と同じくらいでんぷんを含有しているため、ほくほくのフライドポテトやマッシュポテトに使われています。
ジャガイモをゆでた後、蒸して潰して作るニョッキは、でんぷんの多い男爵やラッセルポテトの方がおすすめです。メークインでは潰すときに粘りが出てしまい、うまく裏ごしすることができません(参考:「熱いうちにつぶすのは?水にさらすのは?ジャガイモ調理の謎を解明」)。