<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(8)>
「心と身体の正しい休め方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で、禅僧、精神科・心療内科医の川野泰周さんはこう話す。
「マインドフルネスの状態は練習することができます。お茶を飲むときは、ただひと口のお茶の味だけに集中し、そのお茶が熱くても、渋くてもとりあえず、“きょうはそういうお茶なんだ”と、受け入れる。これで“お茶を飲む瞑想(めいそう)”となりますよ」
コツは物事をしっかりと見る。次に感情をきちんと観察する。
「そこで生まれた感情を悪いとかいいとかという判断を手放します。つまり評価はしない」。川野さんによれば、そもそもネガティブな感情は、口から言葉にして出さない、あるいは見ないようにしていると、どんどん埋没し蓄積する。ある程度心がいっぱいになり、疲れると病気になる。寝こんでしまう人もいる、燃え尽き症候群が起こるという。
「人にはもともとネガティブな恐怖などの感情、もっと感謝されたいなどいろいろな感情をもっています。たとえばそれに見合った給料をもらっていない不満があっても、それを言えず押し殺しています。そうした感情を一切見ないようにすると私たちの心は疲れて倒れてしまいます。だからこそ、あえて“感情を見る”ようにするのです」
“いま腹が立っている”と気持ちをきちんと観察したら、腹が立っている自分を見つめながらも、でもいまは日常を送ることだと切り替えていくイメージだという。
(2020年10月22日、ニッカンスポーツ・コム掲載)