<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(12)>
禅僧で精神科、心療内科医の川野泰周さん。マインドフルネスの考えをもとにした瞑想(めいそう)のコツをこう話す。
「よくマインドフルネスでいちばん基本的な方法として紹介されるのが“呼吸瞑想(めいそう)”です。しかし、実はとても難しい高度な瞑想であることは意外な盲点なんですよ」
「呼吸瞑想」は、そもそも微弱な感覚に注意を向けなくてはならず、うまくできないとあきらめる人も多いとか。
「うまくいかないからといって自分を責めたり、あきらめたりしないでいただきたいです。たとえば、瞑想中に音が気になったりしても、“気になっているな、でも、そのままでいいから意識は呼吸に戻してみよう”と心の中で宣言するようにして瞑想を続けると、やがて音にとらわれなくなってきます。ところが“あの音がうるさいな”とネガティブな感情を連動させてしまうと、どんどんそればかりが気になってイライラしてくるものなのです」
うるさい音だと判断すると、その思考から離れられなくなってしまう。
「“今、呼吸から別の考えに離れたな”から“雑念が出るのは当たり前だから離れてもいいんだ、だけど1度呼吸に戻る”というふうに心の中で対話し、瞑想するわけです」
行為の意図を手放し、“いま”に注意を向けるとはまさにこのこと。
「歩く瞑想は、より手軽にできる方法のひとつ。足が地面についた感覚に注意を向けて歩くだけなので呼吸よりもやりやすいという人が多いです」
(2020年10月31日、ニッカンスポーツ・コム掲載)