<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(16)>
「心と身体の正しい休め方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者、禅僧で精神科、心療内科医の川野泰周さんが勧めるデジタルデトックス。
「SNSで“いいね”を稼ぎたいというのは人間の自然な承認欲求です。しかし、それだけで自分の価値を規定してしまうのは危険です。“いいね”がつくように自らの投稿を修正するので、ありのままではなく、生活のほんの一部のいいところだけを切り取ってしまいます。その結果、架空の自分を作り上げることになってしまいます」。
ついには他人のみならず自分にもうそをついていることになり、居心地が悪くなると川野さんは指摘し、こう警告する。
「自分というリアルな存在とはまったく異なるもうひとりの自分がネット上で独り歩きをはじめます。まるで自分の心と体が乖離(かいり)しているような状態となり、たとえばネット上で炎上したり、たたかれたりすると、“いいね”の数で自分の価値を保ってきた人たちは、全人格を否定されたような心地になってしまう。現実にそれで命を絶ってしまう人もおられるのです」
だからこそ、今ここにいるリアルな自分自身をあるがままに肯定すること(=セルフコンパッション)が大切だと強調する。
「SNSではそれぞれが自分の一部を切り取って見せ、お互いに楽しんでいるという前提の上で楽しむことが得策です。とはいえ、ネットの自分とリアルな自分と混同しがちな子ども世代には心配も少なくありません」
(2020年11月10日、ニッカンスポーツ・コム掲載)