関東大学ラグビー対抗戦の伝統の一戦、12月6日に行われた早明戦に明治大学の新人CTB廣瀬雄也が出場し、34-14の勝利と2季連続18度目の優勝に貢献した。新型コロナウイルス感染防止のため、家族は故郷福岡でテレビ観戦。明大の1年生で唯一のスタメンとして、紫紺のジャージをまとってプレーする息子を祈る思いで見つめていた。東福岡の主将だった昨年4月に右肩を脱臼骨折し、7カ月間の戦線離脱中、リハビリと食生活を全面的に支えた母道子さんが、親元を離れ、コロナ禍で奮闘する息子への思いを語った。
姿を見るだけでハラハラ
「とにかく、チームに迷惑をかけないように。ただ、それだけです…」。
「ゲーム中に先輩たちの頭をポンポンとしているのを見るだけで、そんなことして大丈夫なの!? と思ってしまいます。あの子はちゃんとやれているのでしょうか」。
フィールド上で、学年は関係ない。しかし、トライが決まった歓喜の輪の中で、背番号12が躍動しながら先輩をたたえる姿を見ると、つい、そんな心配が先に立つ。耳を負傷し、テーピングをしながら果敢にタックルにいく姿を見ると、「本音はヘッキャ(ヘッドキャップ)をして欲しいのですが…」と、プレーよりも体のことばかり気にかかる。早稲田大との優勝をかけた一戦は、道子さんはハラハラし通しだった。
決戦の朝は神社で必勝祈願
「早明戦の日の朝は、地元宗像大社の高宮にお参りに行ってきました。おみくじを引いたら『大吉』。勝負運のところは『イメージ通りの結果に』とあり、勝利を信じていました」。
トップリーグの宗像サニックスの前身・福岡サニックスの元選手だった夫友幸さんと試合を見守り、その通りの結果になった。試合後は、LINEに届いた廣瀬からの反省や課題に、エールを添えて返信。離れていても、家族の絆を感じられるひとときを過ごした。
最後まで無事に試合ができるように
明大ラグビー部はコロナ感染予防のため、不要不急の外出をずっと控えている。そんな「八幡山ロックダウン」の様子を記事で読みながら、最後まで無事にシーズンを過ごせるよう願っている。寮には、同じ宗像市出身で玄海ジュニアラグビークラブ、東福岡の先輩、NO8箸本龍雅主将(4年)がいる。3学年離れているため、これまで同じカテゴリーに在籍することはなく、初めて同じチームで戦えることになった憧れの「りゅうがさん」と、1試合でも長く試合ができるよう祈っている。
「雄也の試合は見ていて肩が凝りますが、大阪にいる祖父母がテレビで孫を応援するのを心から楽しみにしているんですよ。コロナで自由に外出ができず、気持ちがふさぎ込む中、明治がトライを取ると大喜びしているんです。録画を何度も見返して、明るさが戻ってきました。家族で元気をもらっていますね」。
弟も母校東福岡で奮闘中
兄の活躍に刺激を受けて、弟幹太(1年、SH/WTB)も東福岡で奮闘。「グリーンジャージ」と言われる1軍入りを目指し、下級生チームで力をつけている。早明戦と同じ日に行われた練習試合では、藤田雄一郎監督から「今日は雄也よりも頑張っていけ!」と激励されたという。
27日に開幕する全国高校ラグビー大会(花園)に、東福岡は21年連続(31度目)で出場する。4季ぶりの優勝を目指すが、無観客試合。こちらも例年と違った形での応援となる。大学ラグビーと高校ラグビー。間近で応援できなくても、息子たちのプレーが家族の希望につながっている。健康であることの意味をかみしめて、今日も遠くから声援を送っている。【樫本ゆき】