<思いよ届け! 特別の冬(1)>

第100回全国高校ラグビー大会は、27日に東大阪市の花園ラグビー場で開幕する。コロナ禍の影響で無観客開催となり、家族も会場では観戦ができない。日刊スポーツでは「思いよ届け! 特別の冬」と題して、西日本の注目校を紹介する。第1回は、5大会ぶり7度目出場の関西学院(兵庫)です。

母子のタッグでたどり着いた舞台

二人三脚で歩んだ母へ-。関西学院高のCTB山本快(3年)は「絶対にテレビで見てくれるので、恥ずかしくないプレーをしたい」と決意を口にする。ラグビーを始めたのは3歳から。最初で最後の花園は、母子のタッグでたどり着いた舞台だ。

関西学院CTBの山本快副主将
関西学院CTBの山本快副主将

母真希さんはアロマセラピスト。山本にとっての“専属トレーナー”。ラグビーのほか、小学3年から約7年間、野球にも打ち込んだ。くたくたで自宅に帰れば、母は疲労回復のマッサージをしてくれた。昨年、スポーツ界で知名度を高めつつある、アロマ精油を使い筋疲労の回復などにつなげるケア方法『アスリートアロマ』の資格を取得。快がお気に入りのラベンダーやペパーミントなどの香りを混ぜたオイルマッサージは「気持ちよすぎて寝れる」と極楽のひとときだ。

自慢の存在でもある。母は資格を生かし、昨年は夏合宿や選抜大会に帯同。“神の手”でチームをサポートした。アロマケア、もみ治療と、選手の疲労回復に欠かせない一員となった。

年頃の18歳。母とチームがつながることに、気恥ずかしさはないものなのか。

「お母さんがいて『恥ずかしい』よりも、ありがたい。(チームの)みんなが『めっちゃいい』って言ってくれるのがうれしいです」。

照れよりも感謝。素直な思いに顔をほころばせる。

その手は時に見守り、時には導いてくれた。一時、野球に専念していた中学2年の時。所属していた野球チームでのもめ事に悩んだ。「ほんまにしんどかった時、親に当たったりしてました」。好きだったはずの野球から、離れたいとすら思っていた。ストレスが募り、母とは小さなことで口げんか。「それでも話を聞いてくれました」。けんかが落ち着くと、いつものようにマッサージを施してくれた。スポーツを始めた幼少期からの、母子のお決まりの時間。「『(野球は)よう頑張ったし、ラグビーいこうか』って前を向かせてくれました。しんどかった時に落ち着かせてくれた。それが印象に残ってます」。悩みも、つらさも手に取るように分かる。母の手はいつも温かかった。

今大会は無観客開催。集大成、感謝の気持ち、高校最後の勇姿。全てテレビ画面越しで伝える。

「組織としてディフェンスをするのは絶対にやらないといけないプレー。その中でビッグタックルとか、自分が起点となってトライを取れるようなアタックとか、工夫してやっていきたいです」。

初戦は28日。盛岡工(岩手)が相手だ。最後まで全力で駆け抜ける。【望月千草】

◆関西学院 1889年(明22)創立の私立校。ラグビー部は1948年創部。兵庫県大会は決勝で34-10で報徳学園を破り、8強入りした95回大会以来5大会ぶり7回目の花園出場を決めた。主なOBにラグビートップリーグ・サントリーのWTB長野直樹ら。部員数47人。

(2020年12月22日、ニッカンスポーツ・コム掲載)