リング上で鍛え上げられた肉体美を披露するプロレスラー。彼らは体を大きくするため、食事でどんな点に気を付けているのだろうか。プロレスリング・ノアの若手エースとして活躍する清宮海斗(24)は「いい体にするにはトレーニングだけでなく食事も大事」と語る。若いころの失敗の経験が、今の体を作り上げた。
中学まではサッカーに打ち込んでいた。サイドバックで走り込みも多く「全然太ることができず、線が細かった」。幼いころからの夢だったプロレスラーになるため、高校では部活に入らず、自分でトレーニングを重ねてきた。当時はウエートトレなどすべて自己流。ただ体を大きくして太ることだけを意識して食べ続けた。本を読んだり、ジムで人に聞いて学んだ。トレーニングを重ねたが、結果は脂肪だけが付いてしまい、ポッチャリ体形に。「全然モテなかった」と当時を振り返った。
清宮 学校にはおにぎり10個。3食の他に夜寝る前にはご飯にツナ缶を入れてマヨネーズをかけて食べていた。家族も(自分の夢を)理解してくれていたので協力してくれたのは良かったが、炭水化物を中心にとにかく食べていた。
プロレスラーになってからの海外経験で栄養とバランスの大切さを学んだ。6カ月間いたカナダでは、肉中心の食事。月に1回は風邪をひいていたという。帰国して日本の食事が、いかに栄養のバランスを考えて出されているかを実感した。
清宮 外食はあまり良くないと言われているが、海外に比べて日本の食事は栄養に気を使っている。ありがたみが本当に分かった。せっかくトレーニングしたのに栄養を持っていかれて体調は良くなかった。
好き嫌いのない清宮でも運動と食事のバランスを間違えるとぽっちゃり体形になったり、体を壊したりする。現在1人暮らしだが、合宿所で出されるちゃんこのおかげでしっかりとした栄養補給ができているという。ダイエットや食事制限よりも、3食食べて体を動かすことが大事だと強調する。アスリートを目指す子どもたちには、好き嫌いなく何でも食べて、適度な運動が大事だと考える。
清宮 運動するのは基本だが、運動しても栄養をとらないとただ体をいじめただけになっちゃう。そこにタンパク質を入れ、加えて3食での炭水化物と野菜も取ることで、そのタンパク質が体に行き渡る。
最後にトレーニングについてもアドバイスをしてくれた。基礎トレーニングで下地を作ってからウエートトレで鍛えることを推奨した。
清宮 ただ筋肉をつけるだけだとケガが増えるだけ。最初は自重トレーニング。腕立てや腹筋、スクワットなど、体の軸となる部分を鍛えた後に、ウエートで外側に筋肉を乗せて、体を分厚くしていく感じ。
「プロレスラーは持久力と瞬発力どちらも持っていないといけない」。バランスのいい食事と、考えられたトレーニングを両立させているからこそ、1年間リング上で戦い続ける肉体が作られる。【松熊洋介】
◆清宮海斗(きよみや・かいと) 1996年(平8)7月17日、さいたま市生まれ。15年3月埼玉県立南稜高校を卒業後、ノアに入門。同12月9日デビュー。16年5月にシングル初勝利。17年7月からカナダで約半年間修業。18年12月に杉浦を破り、史上最年少21歳5カ月でGHCヘビー級王者戴冠。得意技はタイガー・スープレックス・ホールドなど。180センチ、98キロ、AB型。