順天堂大学スポーツ健康医科学推進機構の機構長で前スポーツ庁長の鈴木大地氏は、「やせた若い女性の『食べない・運動しない』に潜む健康リスク」について現状を説明するとともに、問題を提起した。2日、都内で開催されたスポーツ・フィットネスの総合展、スポルテックでのセミナー内で発表した。

筋肉をつけることへのマイナスイメージ

現在、若年女性の骨粗しょう症や過度なやせ等の健康課題が問題視されているが、その背景には運動不足や、運動により筋肉をつけることへのマイナスイメージがあるという。

まず、日常的にスポーツをしている女性はどれくらいいるのだろうか。令和2年度の性別及び世代別のスポーツ実施率を見ると、全世代において男性よりも女性の方がスポーツ実施率は低く、特に20、30代では男性との差が大きかった。

セミナーで公開された鈴木氏の資料より
セミナーで公開された鈴木氏の資料より

運動しない理由1位は「仕事や家事が忙しい」

運動しない理由は「仕事や家事が忙しいから」が圧倒的に多く、次いで「面倒くさいから」が続く。30代においては「子どもに手がかかるから」も重要な要因となっており、子育て世代の生活には、自身が運動することが根付いていない、二の次になっていることが分かった。

セミナーで公開された鈴木氏の資料より
セミナーで公開された鈴木氏の資料より

成長期の女子に目を向けて見ると、中学2年生が1週間で運動する時間(令和元年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」、体育の授業を除く)は、「運動をよくする生徒」と「あまりしない生徒」に二極化されていた。部活動や地域のクラブチームなどで、1週間で420分(1日60分)以上運動する生徒が60.4%いるのに対して、0分が13.3%。10代でスポーツ離れをしている層がいることも明らかになった。

セミナーで公開された鈴木氏の資料より
セミナーで公開された鈴木氏の資料より

健康課題がある若年女性への指導が難しい

こういった状況を踏まえ、スポーツ庁のスポーツ審議会では女性とスポーツに関する課題について意見を交わしているが、障壁の1つに、健康課題がある若年女性の医療機関の受診率が低く、医療側からのアプローチが十分に行えないことがある。妊娠後の女性には母子手帳の交付など行政も関与できるが、妊娠前は状況や実態を把握しづらく、直接的な指導が難しい。

また、働く女性や子育て期の女性にスポーツを推進するには、第一に家族の理解が必要で、スポーツ施設の託児所などを整備する必要もある。ライフスタイルと個々の性格や嗜好に応じたアプローチをどのようにしていくか、今後も議論は続いていきそうだ。【アスレシピ編集部】