プロ野球の一流選手の食事に潜入する「俺の食卓」企画を5回連続でお届けする。さらに、各メニューを株式会社明治の管理栄養士で、レッドソックス上原投手らの栄養サポートをしている大前恵氏が検証した。第1回は日本ハム大谷翔平選手(21)。

上着を脱ぐとムキムキの上半身の日本ハム大谷翔平(撮影・黒川智章)
上着を脱ぐとムキムキの上半身の日本ハム大谷翔平(撮影・黒川智章)

 食生活も「二刀流」だった。大谷は今オフに取り組んだ肉体強化で、その一助となる食事メニューのコントロールを徹底した。「増量期」と「減量期」で、摂取する栄養素を明確に区分する。糖質の摂取→カットとメリハリをつけ、16年仕様のボディーを整えた。

 キャンプイン直前の1月下旬は「減量期」に設定していた。昼食を取るのは自主トレ先の千葉・鎌ケ谷。選手食堂に、そば、うどんなど主食の炭水化物が用意されていたが、一切、断っていた。サラダなど副菜のみというメニューだった。

 一方で、それ以前は「増量期」とした。目標体重だった自己最高の約101キロへアップ。計算して、正反対に近い品目を口に運んでいた。

炭水化物摂取量を一気に上げ、一気にカット

 2段階に分けるオフの「二刀流」の食生活の狙いとは。本人が説明した。

 * 大谷 * 大きな違いは「増量期」は炭水化物をすごく多く取って、タンパク質も取ります。そうしないと「減量期」に糖質をカットしても効果が出にくくなる。その差を広げるためにです。

 食べるものを選ぶことで、トレーニングの成果を、最大限に反映させる。一昨年から専門家に栄養指導を受け、食事を見直した。シーズン中は「糖質メーンの代謝にした方が効率がいい」ため、極端な制限は解除。特殊なのはオフ期間。毎年、恵まれた肉体の排気量を上げるトレーニングに着手する。食事は、肉体改造に効果的なメニューへ変更する。

 その中で「増量期」と「減量期」を区分。炭水化物の摂取量を一気に上げて、一気にカットする。余計な部分をそぎ落とすため、糖質を「過多→排除」と変え、最終的に1日50グラム以下へ制御。効果を上げるためにサプリメントでも補助。代謝を上げて脂肪燃焼を促進する「MCTオイル」のカプセルを毎日、摂取する。ココナツオイルなどに多く含まれる「中鎖(ちゅうさ)脂肪酸」の助けを受け、仕上げに入る。

外食時もストイック、ムダな時間嫌い

 外食時も「減量期」はストイック。焼き肉は牛肉を中心にし、炭水化物は排除する。すしは好物だが、店では米の摂取を避けて刺し身を中心にする。「炭水化物を食べて(トレーニングが)ムダになるくらいなら、食べたくない」。尿試験紙の反応で、その時の体質を確認するのが日課。食事内容の改善、微調整の指針にしている。

 * 大谷 * 食べ物に関しての欲は持っていないです。やりたいことを崩してまで、おいしい物を食べたいという感覚はない。食事も含め、ムダな時間が嫌いです。

 ハードな投打「二刀流」に挑戦できる秘訣(ひけつ)は、食にもあった。【高山通史】

野手としての筋肉作り
<管理栄養士・大前恵氏(株式会社明治)の解説>
 大谷選手の場合、投手でもあり、野手でもあります。去年やってみて、おそらく足りないと思ったのが、野手としての筋肉量なのではないでしょうか。大谷選手から野球選手の理想的な体脂肪はどれくらいなのか? と聞かれたことがあります。16%くらいと答えた時に「それは投手としてでしょ」と言われました。

 では野手としては? という問いには、大谷選手の野手としてのポテンシャルで、何を求められているのかが分からないので、軽はずみなことは言えませんでした。ただ、本人はパワーだと思って、今回こういう取り組みをしているのだと思います。

 まだまだ21歳で発展途上です。体の作り方もいろいろな方法があります。何年かしたら、また違った取り組みをしているかもしれませんが、今年の取り組みの成果に期待したいと思います。

(2016年2月16日付日刊スポーツ紙面掲載)