1997年から06年までエンゼルス、マリナーズとメジャーでプレーし、日本人最多となる517試合に登板した元投手、長谷川滋利氏(47)。現在、ロサンゼルスをベースに野球解説やスポーツ選手の育成、書籍の執筆などさまざまな分野で活躍し、アスリート食にも詳しい長谷川氏に、プロとして活躍するために大切な食事について話を聞いた。5回にわたってお届けする。第1回は幼少時代から大学時代まで。
<長谷川滋利氏インタビュー(1)>
僕の子供時代は、食育に関する情報がまったくありませんでした。親からよく言われたのは「ご飯をしっかり食べろ」。ご飯と梅干を一緒に食べたら良いとか、よく分からない思い込みがいっぱいありました。
「肉を食べたら、野菜もしっかり食べなさい」とも言われていました。いろいろなものをバランス良く食べなさいと言われていたのは、良かったですね。
土曜日はカレーの日
子供で1番問題なのは、例えば、カレーが好きだとそればかりになること。親も楽ですが、週に2、3回カレーを食べさせるというのはダメだと思いますね。わが家では、土曜日がカレーの日でしたが、そういう形で曜日を決める方がまだいいと思います。
子供が好きなハンバーグも、出来合いのものは肉ではなく加工品です。本当の食材を料理してもらい、体で区分して消化することが1番良いと思います。
僕らの時は、ご飯(白米)を食べた方が良いと言われていましたが、今の時代は炭水化物は減らした方が良いと考えられています。息子の洸斗(こうと)も昔はご飯を2、3杯食べていましたが、今は1杯にしてその分、他のおかず、魚類やチキンを食べるようにしています。彼も高校くらいまでは我慢できない部分も大きかったですが、大学生になってご飯を減らして、野球も頑張っています。
東洋大姫路で「食べる体力」
甲子園を目指していた高校時代、東洋大姫路(兵庫)は体力勝負でした。特に夏に強いチームだったので、食事内容は別として、「合宿の時には絶対におかずを残してはいけない、ご飯は必ずどんぶり2杯食べないといけない」というルールがありました。
それに関していえば、栄養学的には良くありません。だけど、食べると胃が大きくなるので、その後食べるのが楽になるんです。暑い夏を乗り切るために、夏バテ防止という意味では、無理やり食べさせるというのは良かったと思います。
食べられなかった選手はバツとして走らされるのですが、良い悪いは別として、夏場の間にバテないような体を作ることができましたね。システム的には最悪ですが、良いことだけ言えば、東洋大姫路は夏の大会の前の2週間の合宿の時に、とにかく「食べる体力」をつけさせる。夏バテで身体がダメになっても胃は元気です。という状態を作っておく。それが科学的に正しいかどうかは、疑問ですが(笑)。
今はもう少し科学的になってきていますよね。例えばマリナーズは、栄養補助食品会社と契約して、どのタイミングで摂取したらいいかという指導をしていますし、状況別の商品も出ています。
しかし、サプリメントはあくまでも補助食品ですから、メインで食事をとった上で足りない物を補う。サプリでヘルシーなアスリートは生まれません。きっちりとした食事をとって、それで足りないものや、天然素材からとれないビタミンDなどを、サプリから取るようにするのがベストです。
国際大会で外国勢に刺激受けた
立命館大時代に、グッドウィル・ゲームズという国際大会に日本代表として出場、シアトルで試合を行いました。22歳の時です。
選手村に入って感じたのは、オリンピックに出るような選手は、起床時間から食べる物まで、ものすごくストイック。自分は、それをまねすることはできませんでしたが、刺激を受け、極力体に良い物を食べようと思いましたね。
選手村には各国の食べ物が置いてあり、何でも食べられました。何を食べるかは完全に選手に任されていて、悪い見方をすれば、偏った食事になる可能性もあったわけですが、自分で栄養のあるものを選んで食べていました。試合前日は力が出るものを食べる、という気の使い方はしていました。
僕らの時代の大学生は、貧乏人が多かったですから、とにかく腹をふくらますことしか考えていなかった。大学は寮生活でしたが、食事が出なかったので結構きつかったです。学校にも行きましたが、基本的に一日中練習をやっているので、昼も時間がない。インスタントラーメンとかそういうものになってしまうんです。
僕は、そのころから食事について少しだけ勉強していたので、朝にプロテインをとって学校に行くとかしていました。大学時代の食生活はでたらめでした。【千歳香奈子】
◆長谷川滋利氏インタビュー