元メジャーリーガー長谷川滋利氏(47)のインタビュー最終回で、長谷川氏はアスリートを目指す子供たちに向け、子供の頃からの食育、家庭での会話が大切と話した。保護者に対しては、できる限り複数の食材を使った方がいいとアドバイスを送った。
<長谷川滋利氏インタビュー(5)>
若い時はある程度、無理な食事をしても大丈夫だと思います。ただ、息の長いアスリートになろうと思ったら子供のころからの「食育」が大切。これだけは、大きくなって治るものではありません。
「MLBアーバンユースアカデミー」という施設で若い選手を指導していますが、でたらめな食事をしている子はプロになって治そうと思っても治らないです。メジャーリーガーでも同じ。ブクブク太っている選手もいましたが、原因は若い時からの食生活。親のしつけで変わってくると思います。
うちの息子も太っていましたが、今はすごくスキニーになってきました。体質もありますが、食育がきちんとできていれば、大学生からプロになる時期に良い体になっているはずです。
長いスパンで家庭で教育
食育で大切なのは「こうしなさい」と言い切るのではなく、話をしてあげることが大切です。食事は長いスパンで変わってくることですから。
子供の頃からずっと、何でこういうものを食べているのか、なぜこれが体に良いのか説明してあげること。例を出して、こういうものばかりを食べていたら病気になってしまうなど、きちんと話をしてあげることです。話すことで、だんだんと分かってくると思います。
食卓でそういう話ができる家庭が良いですね。あとは、母親としては種類を豊富に作ってあげることができれば最高。うちの妻は幸い料理が好きで、いろいろな種類を作ってくれていました。食卓には、必ず4~5種類のおかずがありました。
そういう食事環境で育つと、ファミレスに行ってもメイン+サラダを食べようとなるわけです。うちは特に私がアスリートだったということもありますが、食卓で食事の大切さについてよく話をしていました。
家計のこともあるでしょうが、ぜいたくなものを出さなくてもいいのです。野菜なら複数の種類を出して、肉もステーキでなくチキンや、魚を用意するのでいいと思います。今はおいしい、新鮮な魚もたくさんあります。刺し身で食べるのでも良いですよ。子供のうちは親が協力してあげることが必要です。バランス良く一通り、いろいろ食べることです。
極端な例を真似する必要なし
極端な食事をするトップアスリートを見習う必要はありません。米国人は、ものすごく勉強している人は極端な食事をする人が多い。チキンならチキン、白身なら白身しか食べない。また脂身はまったく食べないとか。そういうのを見ていると、行き過ぎだなと思います。
イチロー選手は、昼はカレーばかり食べていますが、それは彼だからできること。他で補うことができますからね。でも、普通の人はまねてはだめです。
何か1つが良いと聞くと、そればかりになるのは良くない。誰かが何かが良いと言うと、皆それに飛びついてしまう。ご飯、炭水化物だけたくさん食べれば体が大きくなるとか、肉を食べていたら筋肉がつくというのもウソ。野菜ばかり食べるのもダメ。やっぱりバランスが1番です。
さらに継続が必要です。トレーニングでも、2時間やって次の日にやらないくらいなら、20分を週3回続ける方が良いわけです。食生活も、いつもダイエットして1週間や1年で挫折してやめるくらいなら、週に3回だけちゃんと決めて、それ以外の日は好きなものを食べるという方がずっといい。ある程度、計画を立ててやるのは良いですが、あまりこだわりすぎないようにすることも大切です。(終わり)【千歳香奈子】
◆長谷川滋利氏インタビュー