<浅野吉隆さんインタビュー(2)>

 米プロサッカーリーグMLSのLAギャラクーでメディカルスタッフを務める浅野吉隆氏は、体操で五輪出場を目指す12歳の娘の父親でもある。第2回はアスリートを育てるための食育について。

肉も野菜もバランス良く、違うタンパク源を

 娘の栞名(かんな)は12歳なので、ちょうど体が変わってくる大切な時期です。この時期には適切な栄養素をきちんと取ることが、長い選手生活だけでなく、さらにその後も健康な人生を歩むために必要です。

浅野吉隆氏と愛娘の栞名さん
浅野吉隆氏と愛娘の栞名さん

 カリフォルニア州選手権で優勝し、先日、州の代表選手として4州が集まるリージョナル1という大会に出場して、総合優勝しました。将来、五輪出場を目標にしているので、最近は食事の面でも自ら少しずつ気をつけるようになってきました。

 スポーツをやっている人は、やはり肉のタンパク質は必要。肉の食べ過ぎは良くないなどと言われてきましたが、それは年齢が少し上の世代の人たちの話だと思います。若い世代のスポーツをやっている人が肉を食べることは決して悪いことではない。野菜と肉ではタンパク源の種類が違うので、肉も野菜もバランス良く食べることが必要だと思います。

 脂の少ない赤身が理想ですが、子供の場合はなかなか難しいですよね。それを我慢させて、カップラーメンで代替えするくらいなら好きなものを食べさせた方がいいと思う。大人になって腸が固くなった状態で肉類を多く食べると便秘になったりしますが、子供の場合は牛肉のタンパク質が成長に必要なので、腸がキレイな状態ならどんどん取っても良いと思います。

 娘はアメリカ生まれですから、時にはジャンクフードも食べることもありますが、タンパク質は多くとらせるようにしています。炭水化物はあまりとらないですね。日本人のように、ご飯はあまり食べないです。例えば、日本人だと納豆ごはんを食べるところを、彼女は納豆だけ食べています。

日本ほどストイックな体重制限なし

大会で優勝し、表彰台の中央でポーズを決める栞名さん
大会で優勝し、表彰台の中央でポーズを決める栞名さん

 体操は見た目が大切ですし、体重が増えることで動きが悪くなることが顕著なスポーツなので、食事は気を付けますね。日本や中国は食事制限をして体を大きくしないということを聞きます。体操の世界では常識となっているようですが、今の体操女子はアメリカが強く、こちらの選手はふくよかな体の人もたくさんいます。アジア人はみんな小さいですが、逆にアメリカ人はボリューミーな人が多いですね。もちろん、アメリカの選手も食事制限をしているとは思いますが、日本ほどストイックな食事や体重制限はないと思います。

 日本では体重を毎回測って増えていたら練習をさせないというようなジムもあると聞きます。そうすると、子供たちは「食べない」しか選択肢がないですよね。練習して筋肉が増えれば、必ず体重が増えますから。増えたら怒られて練習ができなくなるとなれば、食べないことしかないんです。すると、体重が増えないので成長が止まります。成長ホルモンが出なくなってしまいます。

 娘のジムのコーチは、食べるなとか体重を増やすなとかいう指導はしていません。同じジムからはロンドン五輪に出場した選手もいますが、その子もそこまで過酷な食事制限はしていなかったと思います。

 娘も、年齢とともに自分なりに食材を気にするようにはなってきました。例えば、何かを食べる時に内容物をみて「こっちはお砂糖がこれだけ入っているけど、こっちは入ってないよね。どっちが体には良いの?」と聞いてきたりします。そこで、でもこっちには人口甘味料が入っているよと教え、いろいろな栄養について話をするようにしています。

 僕がこれを食べるなとか、これが良いとか口すっぱく言っても、自分の意思がなければいけない。どういうものが体に良いのか、食べるならどっちの方がいいのかということを、自分の判断で選択できるよう、親がしつけていくことは重要です。

 ご飯3杯とタンパク源ならどっちを選ぶと良いか、うどんとそばならどっちを選ぶか、揚げ物とお魚とどっちを選ぶか、そういうことがきちんと正しく選べるようになってくれば、一歩ステップが上がってくると思う。患者さんにもそういうことは説明しています。【千歳香奈子】