<浅野吉隆さんインタビュー(1)>
米プロサッカーリーグMLSのロサンゼルス・ギャラクシーでメディカルスタッフを務める浅野吉隆氏は、米国公認カイロプラクティックの資格を持ち、デービッド・ベッカムらプロアスリートを間近で診察してきた。専門家から見る栄養の大切さについて話を聞いた。第1回はプロ選手について。
完璧な食生活はプロも難しい
体の構造上の問題を栄養面も含めて、患者さんにアドバイスするのが私の仕事です。LAギャラクシーのメディカルスタッフとして、鍼の治療やマッサージをしています。
自分のクリニックでは、痛みがあってこられる患者さんを診て、その原因を探るのが主な仕事。体の構造上の問題や姿勢などがある方も多いですが、栄養のバランスが悪かったり、体が酸化していることが原因で痛みが出ているという方も多い。そういった患者さんには、栄養面なども含めて指導を行っています。体の治療だけではなく、精神やストレス面なども含めてトータル的なアドバイスをすることが多いですね。
LAギャラクシーで選手の治療をしており、いろいろな選手を診ていますが、栄養士の指導する完璧な食生活を実行している人はほとんどいません。彼らに話を聞くと、栄養士の言っていることは分かるが、そんなの無理だよと言うんです。練習して、日常生活があり、結婚をしていたりすると、そんなにいつもいつも栄養士が言うような食事を続けてられないんです。
プロの人でも、そうなんですね。あのベッカム選手だって、実はジャンクフードが好きで遠征先ではそういうものを食べたりしていたようです。アメリカの選手は肉食が多いので、動物性のタンパク質を摂取することで持久力や筋力に影響が出ると思います。
脂質を取らないと生理が止まることも
ただ、やはり長い目で見ると栄養をきちんとバランス良くとることは大切です。特に女性にとって、ホルモンはとても大切です。ホルモンは脂質でできていますから、適度に脂質を取らないと女性ホルモンが分泌されず、ひどい場合は生理が止まることもあります。
知り合いの競泳選手にも、生理が止まっている人が多い。競技のために無理やり止めているんですね。競技をやっている時はそれでもいいですが、引退したら体がボロボロになっているのでは元も子もありません。スポーツの世界でトップアスリートになれるのは1%だけといわれます。そう考えると、やはり長い目でみると食事はいかに大切なのか分かります。
オーガニックは体に良いとか言われますが、値段はやはり高めですから毎日となると家計的にも大変ですよね。だから、いろいろな情報の中から、ベストじゃなくて、ベターなものを選択することも大切なのではないでしょうか。そして、可能な限り、食べ物を口から入れて噛んで食べることが重要です。
もちろん、足りないものをサプリなどで補うことも必要ですが、それも単に今この栄養、サプリが流行っているからというだけでやみくもに取るのではなく、きちんと知識を持って自分に必要なものを取るということが大切。例えば、油が少ないならオメガオイルをサプリで補うというのは女性ホルモンにとってはとても有効です。【千歳香奈子】
◆浅野吉隆(あさの・よしたか) 1994年、駒大法学部卒。1999年に渡米し、オハイオ州立大にて修学。2005年、南カリフォルニア健康科学大カイロプラクティック学科卒業。米国公認カイロプラクター。カリフォルニア州認定鍼灸師。2009年よりMLS(メジャーリーグ・サッカー)ロサンゼルス・ギャラクシーのメディカルスタッフとしてチームで診療を開始。カリフォルニア州アーバインで浅野カイロプラクティック&鍼灸クリニックを開業し、アスリートのパフォーマンス診断なども行っている。