夏休みは合宿や試合などで技術やパフォーマンスの向上を狙う良い機会ですが、同時に新学期に向けて体作りをすることも重要な課題の1つ。筋力、瞬発力アップには栄養バランスが大切です。栄養の研究がさかんな米国には、中高生など10代選手(ユース)向けのスポーツ栄養情報を提供するサイトがたくさんあり、公認スポーツ栄養士らプロが指導。そのいくつかを紹介します。

ロサンゼルスで行われた子供向けサッカー教室で指導するデービッド・ベッカム(2007年7月=撮影・千歳香奈子)
ロサンゼルスで行われた子供向けサッカー教室で指導するデービッド・ベッカム(2007年7月=撮影・千歳香奈子)

適切な栄養と水分、休養が必要

 カリフォルニア州サクラメントを拠点に全米有数の非営利総合医療ネットワークを展開する「サターヘルス」は、スポーツをするユース世代に必要な栄養の情報を公開している。健康的な体作りと運動能力を維持するには、トレーニングだけでなく、適切な栄養と水分補給、そして休養が必要だとアドバイスしている。

朝食は必ず食べること。朝食を抜くと疲れて集中できなくなり、その後の食事や間食でより多く食べてしまうので逆効果。

運動能力を高めるには、運動前、運動中、運動後にきちんと食事をすること。

水分補給は重要。運動の2~3時間前、朝食中、休憩中にも水分を補給すること。特に運動後の水分補給は大切。

身体に良くないイメージが強いが、エネルギー源となる脂肪は必要な栄養素。ピーナッツバターやアボカドなど健康的な脂肪分を取ること。必須脂肪酸オメガ3を含むサーモンなど魚介類、ナッツなども摂取しよう。ただし消化に時間がかかるので、運動の数時間前からは脂肪分は取らないよう気をつけよう。

運動前にミートソースパスタなど炭水化物を取る。タンパク質はエネルギーを作る燃料となるため、とても重要。運動後は消費したカロリーを補うための食事も忘れずに。ハードな運動や試合の後は筋肉を修復するためにタンパク質が必須。ただし、チーズバーガーやフライドチキン、ベーコンなど添加物の多い加工食品は避け、赤身の牛肉やチキン、豆腐など大豆製品を食べよう(※米国でもスーパーで豆腐が売られているが、フルーツと一緒にミキサーに入れてシェイクするなどの食べ方をする)。

試合前の食事は神経質になる人も多いが、できるだけブドウやトースト、ベーグルなど軽い物を食べるよう心がけよう(※米国では、皮ごと食べられるブドウを保存用ポリ袋などに入れて持ち運び、ランチやおやつに食べる人が多い。スポーツ中に食べる人もいるようだ)。

砂糖を使った甘い食べ物は運動前には避けよう。

食事は学業との両立、目標達成のための活力

 若い世代は正しい食事がエネルギー源となり、パフォーマンス向上につながっているとして、10代のスポーツ選手にスポーツ栄養学の情報を発信しているのは「nextgear nutrition」。食事はスポーツのみならず、学業との両立や日常生活においても目標達成のための活力となると説明している。

 エネルギーレベルを持続させ、ピーク時の能力を維持するには、練習前後の食事だけでなく、練習や試合中の食事も大切だとアドバイス。試合中は食事時間はなく、激しい練習中は消化の悪い物を身体は受け付けないが、バナナなどのフルーツ、エナジーバー、ピーナッツバター&ジャムの小さなサンドイッチなら手軽に食べられて必要な栄養補給ができるし、スポーツドリンクの活用でも良いとしている。

 一方で食べてはいけないものとして、ハンバーガーやフライドポテト、ソーセージ、ベーコンなどの加工品、豆類、チーズなど消化や吸収に時間のかかるもの、ドーナツ、菓子パン、キャンディなど砂糖が入ったもの、糖アルコールを含むシュガーフリーのガムなどを挙げている。

プロ選手の食事法と栄養情報を配信

 プロの食事法と栄養を参考にしているのは、スポーツ情報を発信するオンライン「Active」。主に以下のようなアドバイスを送っている。

*腹や喉が渇いた状態で運動はしない。
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朝食は必ず食べる。タンパク質、全粒粉とフルーツは必須。
*こまめな水分補給。
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ハンバーガーやフレンチフライなどジャンクフードは避ける。
*女性は特に赤身の肉、魚、チーズやナッツ、卵黄など鉄を多く含んだ食事をする。
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計画的な食事のため作り置きをする。
*カロリーを減らすことばかり考えない。
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エネルギー源となる糖質はカットしない。
*練習後の食事は重要。チョコレートミルクは体力を回復させ、筋肉の疲労を抑えてくれるお手軽なドリンク。
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野菜、果物、タンパク質など新鮮な食材でバランスの良い食事をする。

 米国でも、若いアスリートやその保護者、指導者も食事や栄養バランスへの意識は高まっている。目的によって、情報をうまく利用しているようだ。【千歳香奈子】