オランダ1部ヘーレンフェインのMF小林祐希(25)が4日、プロ生活をスタートさせたJ2東京ヴェルディの練習場で、国内の自主トレーニングを打ち上げた。W杯ロシア大会まで1年を切った。今年6月のW杯アジア最終予選のメンバーには選ばれなかったが一喜一憂はしていない。新シーズンの目標、現在取り組んでいるトレーニング、W杯への思いを聞いた。
1秒遅いと世界で勝てない
昨年8月に磐田からオランダに渡り、間もなく1年になる。昨季は30試合1得点と結果を残した。日本に帰国後、真っ先に向かったのがジュビロ磐田の練習場だった。元チームメートと体を動かし感じたことがある。
小林 みんな(プレーの)判断はしているんですよ。でも決断が遅いから、プレーが遅い。おれは考えてない。感じた瞬間に動きだしてる。それだけで1秒違うんですよ。1秒遅いと、世界では勝てない。
欧州でプレーすることを意識した昨年5月。小林は約10年の間、体のケアを担当しているトレーナーにこう相談した。「世界の選手は即決してプレーしている。自分が考えているすきに動いているから、このままでは世界では勝てない。考える前にプレーしたいんです」。トレーナーは「それは、頭と心を鍛えないとね」と、瞑想(めいそう)トレーニングを取り入れるメンタルコーチを紹介してくれた。
脳科学者とメンタルコーチが開発したプログラムで、朝晩、薄暗い部屋で目をつぶり瞑想(めいそう)する。当初は「何も考えないってめっちゃ難しい。思考がグルグル回って、最初は5分じっとしているだけできつかった」と振り返るが、今は目をつぶって自分の呼吸に集中し、邪念や雑念を沈め無心の境地へと入ることができるという。
1年の瞑想トレーニングの成果は目に見えて表れていた。帰国後、ジュビロ磐田で練習した際、名波浩監督から「(プレーに)邪念がなくなったね」と成長ぶりを指摘され、鈴木秀人コーチからも「邪念がないから動きが速い。プレーしようとして、ギリギリでやめられるようになってる」と言われた。
小林 邪念があると判断が遅くなる。今は判断の項目を通り越して決断できているかな。ちょっとでも考えたら、すぐ相手に囲まれちゃう。オランダで、自分がトレーニングしたことを1年間出して、経験できたことが大きかった。
W杯代表へ「2ケタ得点」
来季もヘーレンフェインでプレーする。新シーズンへの目標に「2ケタ得点」を掲げる。中盤での起用が予想されるが「ポジションは関係ない。ボランチでも、FKとミドルシュートで冬までに5点は取りたい」と意欲を見せる。W杯ロシア大会が1年後に迫り、小林にとって夢舞台に立つための大事な年になる。
小林 チームで試合に出ていたら絶対に行けると思っている。まずチームで試合に出て勝ち続けることを先に考えて。自分の夢はW杯だけではない。欧州チャンピオンズリーグ(CL)にも出たいし、そこで勝ちたいとかいろいろある。もちろん、W杯は特別な大会だし行きたいけど、そこだけに照準を合わせて、もし選ばれなかったら、おれの人生そこで終わるのかといったら終わらないし。選ばれるためには、今年は試合に出続けて結果を出すことが大事。シンプルなので。やれることはやります、という感じかな。
6月のW杯アジア最終予選イラク戦は選出されなかったが、一喜一憂はしていない。むしろ「ヒーローは遅れてやってくる、と自分に言い聞かせて奮い立たせています」と強い決意をにじませた。
栽培地訪れるこだわり
海外の生活で大切にしているのは食。「自分の体に入れるわけだから、食べ物は相当大事。パンや麺類だとおなかいっぱいになる感じがしない」と、特に主食の米にはこだわっている。知人から紹介された、山形県産の有機栽培の米「夢ごこち」を取り寄せている。
この休暇期間中、自身の1年間のプレーを支えてくれた「米」がどのようにして育ったかを確かめるため、山形の田んぼに向かった。「肥沃(ひよく)な土で育っていて生命力が強い。5キロで6700円とちょっと高いかもしれないけど、自分の体が劣化しないんだったら安いです。栄養を取るために食べてるものが、体を劣化させてたらたまらないからね」と話す。
近日中にチームに合流するため、再びオランダへと向かう。約1カ月のオフで、ジュビロ磐田、東京ヴェルディと古巣の仲間とトレーニングに励み、食のルーツも探訪した。心身ともにリフレッシュした小林は、無心でプレーし夢へまた1歩近づこうとしている。【岩田千代巳】
(2017年7月5日ニッカンスポーツ・コム掲載)