「どこが相手でも1戦必勝。エラーが少ない固い守備と、基本を徹底したワンプレーを大切にし、夏という特別な大会を制したいと思います」。14日に開幕する高校野球夏の宮城大会を前に、東陵の佐々木頼偉(らい)主将(3年)が表情を引き締めた。春の県大会では準優勝。今夏は第2シードから夏の頂点を目指す。

春の宮城大会準決勝で仙台育英に5-1で勝利した瞬間。8安打1失点完投のエース佐藤が粘投した
春の宮城大会準決勝で仙台育英に5-1で勝利した瞬間。8安打1失点完投のエース佐藤が粘投した

 今年のチームは、エース佐藤瑞輝(3年)の抜群の制球力で失点を計算できるのが強み。千葉亮輔監督(45)が考える必勝パターンは「3点以内に抑えて、5点を取って勝つ」。固い守りで勝機を広げ、29年ぶりの夏の甲子園を目指す。

春の宮城大会で仙台育英を破り、2年連続の決勝に進出した東陵。4つの併殺を取り、守備で流れを引き寄せた
春の宮城大会で仙台育英を破り、2年連続の決勝に進出した東陵。4つの併殺を取り、守備で流れを引き寄せた

校長が改革「おいしく、楽しく」

 そんな東陵は「ビストロ風学生食堂」が自慢だ。野球部員約70人が生活している「青雲寮」の1階に昨年11月にオープンした学生食堂は、昼は一般生徒も利用でき、憩いの場となっている。「日替わりランチ」の他に、カレーと麺類が選べるとあって、生徒たちはうれしそうにメニューを選んでいる。その様子は学校ホームページのトップ画面にも掲載され、校内の「イチオシトピック」にもなっている。

野球部寮の1階にある学生食堂。昨年11月の「メニュー改変」をきっかけにオシャレで美味しい食事が楽しめるようになった。この日の昼食はロコモコ丼
野球部寮の1階にある学生食堂。昨年11月の「メニュー改変」をきっかけにオシャレで美味しい食事が楽しめるようになった。この日の昼食はロコモコ丼

 甲子園には春1回、夏1回の出場経験がある。「食事から、チームを支えよう!」との改革の発案者は、昨年4月に就任した大谷晋示校長。料理人の田中正実さんを招き、学校全体の「食育革命」を起こした。

昨年のクリスマスメニュー「牛ホホ肉のワイン煮」は選手に大好評だった(提供写真)
昨年のクリスマスメニュー「牛ホホ肉のワイン煮」は選手に大好評だった(提供写真)

 栄養のバランスを最優先とし、食事の基本である「おいしく、楽しく」を見直した。昨年のクリスマスには「牛ホホ肉の赤ワイン煮」とケーキのセットが振る舞われ、「ビストロ風」のメニューに選手たちは大喜びだった。

人気メニューのタマネギ坦々麺(提供写真)
人気メニューのタマネギ坦々麺(提供写真)

 「寮のゴハンがおいしくて毎日が楽しみ」「キツイ練習も、夜のゴハンのことを考えると張り切れる」。公式戦の取材をしていると、選手の口から自然と食事の話が出てくるようになった。強さの一因は、密度の濃い練習の後に待っている「美味しいゴハン」で間違いない。

人気メニューのチキンカツ丼(提供写真)
人気メニューのチキンカツ丼(提供写真)

「ゴハンが楽しみ」で体重14キロ増

 「朝はパンでもご飯でもどちらでもOK。おかずさえしっかり食べればご飯の量は強制していません」と千葉監督は寛容だ。おいしい食事の効果で、背番号10の松浦幹起投手(3年)は約半年で体重が14キロもアップ。大会中も体力が持つようになった。

人気メニューの塩コーンラーメン(提供写真)
人気メニューの塩コーンラーメン(提供写真)

 春の準優勝に貢献した3番角田翔太選手(3年)は「クリームたっぷりのカルボナーラが大好きで、いつも大盛りにしてもらっています」。4番小野勇人選手(3年)「寮のカレーライスは日本一おいしい」と絶賛。他にも、チキンカツ丼、塩コーンラーメン、タマネギ坦々麺などが人気メニューで、練習で疲れた体を回復させてくれている。試合のある日は昼の弁当を作ってもらい、バックアップ体制は万全だ。

人気メニューのカレーライス(提供写真)
人気メニューのカレーライス(提供写真)

 夏の初戦は16日の第2試合(12時半)、Koboパーク宮城で大崎中央と対戦する。 春は、県内公式戦無敗だった仙台育英を準決勝で破った。同校に勝つのは2年連続で「IKUEIキラー」と称されるようにもなった。

食事をおいしく食べられることが、選手たちにとってストレス解消にもなっている。大盛りのロコモコ丼を頬張る選手たち
食事をおいしく食べられることが、選手たちにとってストレス解消にもなっている。大盛りのロコモコ丼を頬張る選手たち

 夏も両校が勝ち上がれば、春と同じく準決勝で対戦する。佐々木主将は「春、育英に勝てたのは相手を意識せず開き直って戦えたから。夏も同じように、東陵のスタイルで守り勝ちます」。謙虚な気持ちを忘れずに、堂々と必勝宣言した。【樫本ゆき】

2014年にセンバツ出場しているが、夏は88年以来遠ざかっている。春準優勝の勢いに乗って、夏を制するぞ
2014年にセンバツ出場しているが、夏は88年以来遠ざかっている。春準優勝の勢いに乗って、夏を制するぞ

東陵高校野球部

学校創立の1983年に創部。部員数93人(3年=29人、2年=20人、1年=41人)。甲子園出場は春1回、夏1回。庄子宗男部長、千葉亮輔監督、渡邊浩二、工藤将理コーチ。主なOBは、井上純(元横浜、ロッテ)、相原和友(元楽天)ほか。宮城県気仙沼市大峠山1番地1