プロ野球広島カープがセ・リーグ連覇を達成後、JR広島駅構内で好調な売れ行きを見せている弁当があります。その名は「カープ日本一優勝祈念弁当」。カープの応援弁当を10種類以上販売する広島駅弁当(本社・広島市東区)が昨年に続き販売しています。優勝後は1日に400個以上売れている験かつぎ弁当にはファン心理をくすぐる仕掛けと担当者の熱い思いが込められています。

 昨年の「カープ日本一優勝祈念弁当」はペナントレースと日本シリーズを重ねて勝つという願いを込めた「ミルフィーユカツ」、ウィナー(優勝者)にちなんだ「ウィンナー」などの具材でした。今年はセ・パ11球団の本拠地のご当地グルメなどを詰め合わています。

17年発売の「カープ日本一優勝祈念弁当」は他球団のご当地グルメが詰まっている(撮影・松浦隆司)
17年発売の「カープ日本一優勝祈念弁当」は他球団のご当地グルメが詰まっている(撮影・松浦隆司)

 フタを開けると、色とりどりの食材です。セ・リーグは、たこ焼きが阪神、シューマイ・ごま団子がDeNA、かんぴょう巻が巨人とヤクルト。パ・リーグは辛子めんたいこがソフトバンク、みそポテトが西武、牛タンが楽天……。広島がCS(クライマックスシリーズ)、日本シリーズで対戦する可能性のあるチームのご当地グルメもあります。

 広島駅弁当営業部の小田一彦課長(60)によると、具材を選ぶのに苦労した球団もあったそうです。「阪神のたこ焼き、楽天の牛タンはすぐに思いつきましたが、巨人とヤクルトの東京はぴったりとくる具材がなかなか見つからず、焦りました」。発売時期は昨年と同様に9月上旬と決めていましたが、広島のマジックが昨年よりも早く8月上旬に点灯。時間との勝負でした。

 17年度バージョンの弁当には「敵チームを食べて打ち勝とうという思いを込めました」と小田さん。弁当のパッケージには「今年こそ絶対日本一!!」の文字とともに緒方監督が選手に胴上げされているイラスト。指揮官が笑顔で宙を舞っています。

 昨年のパッケージは緒方監督の胴上げシーンは同じですが、文字は「絶対見たい、この瞬間!!」でした。17年度バージョンでは胴上げに参加する選手の顔ぶれ、選手の胴上げする位置も変わっています。小田さんは言います。「今年活躍した選手がなるべく真ん中にくるようにしました」。細かいことですが、実はこの配慮こそが、一番大事なことだと思います。担当者のカープ愛を感じます。

16年発売の「カープ日本一優勝祈念弁当」(撮影・松浦隆司)
16年発売の「カープ日本一優勝祈念弁当」(撮影・松浦隆司)

 昨年はファンの願いはかなわず、日本一を達成することはできませんでした。リーグ連覇後、広島の街では日本一を願う声が多く聞かれました。今年の「カープ日本一優勝祈念弁当」には担当者らの強い思いが込められています。昨年の「絶対見たい、この瞬間!!」から「今年こそ絶対日本一!!」。

 弁当は税込み1080円。販売期間は日本シリーズ終了まで設定していますが、広島がCS(クライマックスシリーズ)で敗退、日本一を逃した時点で販売は終了する予定。しかし小田さんは「負けは想定していません」。33年ぶりの日本一へ、弁当には応援用のユニホームが抽せんで33人に当たる応募はがきが付いています。【松浦隆司】

(2017年9月24日付ニッカンスポーツ・コム掲載)