2年前からタニタによるコンディションサポートを受けている女子競歩の日本第一人者、岡田久美子選手(25=ビックカメラ)は合宿時以外、朝は自宅、昼は外食、夕飯はJISSや味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)の食堂を利用する。朝の主食はパンからご飯に代えた。管理栄養士で公認スポーツ栄養士の堀越理恵子さん(36)がすすめる惣菜などを、前夜のうちにデパートやスーパーなどで購入して摂ることもある。
好きな食材はブロッコリー。「ビタミンCがとても多いから、朝昼晩と食べています。塩ゆででも、ドレッシングをかけてでもいけます」。栄養素を考え、いろいろな食材をバランス良く摂っている。
食べるタイミングも重視。特に練習後は「ハードな練習で食欲がない時は、無理に食べず、時間をおきます。反対にお腹が空いているときは早めに食べます」と岡田選手は話す。
「食べないでやせる」はダメ
競歩もマラソン同様、体に負担のかかる過酷な競技。バランスの良い体作り、スタミナはもちろんだが、体重管理も必要だ。体重が軽い方が有利とされる長距離界はかつて、「体重」の数値だけに重きが置かれ、無理な減量で体を壊す選手が多かった。特に女性は生理不順や無月経となり、疲労骨折を引き起こし、競技人生を終えなければならない選手もいた。
スポーツ栄養学が浸透し始め、競技団体や管理栄養士、公認スポーツ栄養士らが、しっかり食べて体を作ることを指導するようになったとはいっても、まだ「食べないでやせる」を考える選手も少なくない。
そんな中、岡田選手は率先して後輩たちに食事の大切さを伝えている。昨年11月から始まった女子競歩選手のみの合宿に行く際、「行動で見せてきます」と堀越さんに宣言。食材の選び方や食べる量などを見せ、女子競歩界に多いに刺激を与えているという。
世界で勝つために「油断しないで」
堀越さんは岡田選手について、「伝えたことはすべて実行する、素直でクレバーな選手。食事に関して知識もあるし、実践もできる。あとは結果だけ」と言う。
昨年のリオ五輪は16位。前々日にお腹を下し、不安を抱えてのレースだった。
ロンドンで行われた8月の世界陸上では自己ベスト(1時間29分40秒)更新と上位入賞を目指したが18位と、力を発揮できなかった。岡田選手は普段、水やお茶を1日2リットル以上飲むが、練習時とレース当日の寒暖差で水分調整がうまく行えなかったのも、結果を出せなかった要因の1つかもしれない。
「岡田さんには、油断をしないでと伝えたい。普段の食事や体作りはしっかり行えるようになっているので、環境の変化などの影響で調子を崩してしまうところがもったいない。同時に、私自身の教育不足も感じている。岡田さんなら、日本でトップは当たり前。世界で、勝たせてあげたい」。
目指すは3年後の東京五輪でのメダル。堀越さんと岡田選手の戦いは続く。
○…千葉県出身の堀越さんは、山梨学院大で法律を学んだ後、弁護士事務所で秘書として2年間勤務。その後、管理栄養士を目指して専門学校に進学した変わり種だ。管理栄養士免許を取得し、学校給食、特定保健指導関連企業を経て、現在はタニタヘルスリンクの社員として、アスリートだけでなく、一般向けの健康セミナーの講師なども務める。社会人時代、格闘技選手だった友人が減量、増量を繰り返すのを見て、スポーツ栄養の世界を目指すようになった。岡田選手以外では、山梨学院大(中長距離)や実業団の陸上選手、サッカー選手らの栄養サポートも手がけている。
1991年(平3)10月17日、埼玉県上尾市出身。ビックカメラ所属。上尾東-熊谷女-立大。高校から競歩を始める。08年世界ジュニア1万メートル8位。3000メートルの日本高校記録保持者。インカレ1万メートル4連覇で同種目の日本学生記録保持者。日本選手権の女子20キロでは、15年から3連覇中。世界陸上は15年北京大会で25位、17年ロンドン大会で18位。昨年のリオ五輪は16位。自己ベストは1時間29分40秒。好きな食べ物は焼肉、ステーキ、ブロッコリー。158センチ、47キロ。血液型は0。
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