バレーボール女子の元全日本選手、木村沙織さんや大山加奈さんらを輩出したことで知られる名門・下北沢成徳(東京)は、4日開幕の春高バレー(全日本高校選手権)で3連覇を狙います。同部は、女子栄養大の栄養生理学研究室と連携し、食事指導と専用機器での体組成測定を行いながら、選手に「食の大切さ」を意識させています。そんな取り組みについて、小川良樹監督(62)に話を聞きました。【聞き手・中西美雁】
なぜ食べるのか、意識させる
2カ月に1度、食事指導と専用機器での体組成測定を行っています。体組成では、まず体脂肪を見ます。そして筋量。どうやったら体脂肪を減らせるのか、どうやったら筋量を増やすことができるのか。体組成測定を通して自分の体の変化に、食事がどう関係しているかを見ていきます。全国大会のときには、研究室の学生たちが試合前の食事を作ってくれることもあります。選手に「食と体」の関係について理解してもらうためです。
生徒たちは、まず食べることに関心がありません。食べることは小さい頃からの家庭の習慣ですよね。しかし、食べたいものを食べて、食べたくないものは食べないで育ってきています。おいしいか、おいしくないか、お腹がいっぱいか、そうでないかということで積み上げてきたものを、どう崩すかが大変です。
3年生で劇的に変わる
1年生はまず、そんな話をしても理解できません。研究室には、タンパク質がなぜ必要なのか、運動すると体の中でどういうことが起こるのかをかみ砕いてお話いただいています。体組成の話に興味を持ち出すのは、2年生の半ばくらいから。話についていけるようになると、「練習前にどんなものを食べたらいいのか」「補食は何を、どのタイミングでとった方がいいか」といったことを、料理写真とともに学生に相談するようになります。
さらに3年生になると、劇的に意識が変わります。体の変化が出てきたときに、「それがなぜなのか」「もっと変化させるにはどうしたらいいのか」と、自分の意志で行動するようになります。
○○禁止といったルールはない
現実的に、食事のとり方が変わるのは最低でも1年、遅い子だと2年かかります。寮などで管理してしまえば手っ取り早いんですが、その環境から離れたときに自立できません。だから、「これは食べちゃダメ」や「炭酸飲料はダメ」といったルールは作りません。与えるのは常に「知識」。知識に沿ってどう実行するかという話はするけれども、チームとして押し付けるような指導はしていないのです。
いくら管理しても、こちらの目が届かないところで好きなものを食べたら意味がないじゃないですか。だから、生徒自身が自立できるよう知識を与え、行動して実感してもらうよう育てているつもりです。(談)