東福岡ラグビー部の藤田雄一郎監督(45)のパソコンには、ある円グラフが描かれている。「強いチーム」を作るための体づくりの法則だ。
「栄養50%・睡眠30%・トレーニング20%」
「バランスのいい食事と、十分な休養を取れば、体は勝手にでかくなっていく。トレーニングは2割程度でいいんです」と藤田監督は言う。
5日に行われた全国高校ラグビー大会準決勝で、東海大仰星(大阪第2)に14-21で敗れたが、過去10年で全国制覇6度という強さの根拠はここにある。現チームのFW平均身長180.7センチ、平均体重92.9キロという体格が、「猛練習」で作られたものではないということにも驚かされる。
平日練習2時間、食事ノルマなし
平日の練習時間は約2時間。週1回、月曜日が完全オフになっており、自主練習も禁止だ。全体練習の後、自主的にウエートトレをする選手を見つけると、藤田監督は「あと10分で終われよ! それ以上やったら怒るからな」と笑顔を交えて忠告する。
就任6年。試行錯誤しながら独自の指導法を編み出してきた。「筋力をつけるためには休養が必要。ダラダラと練習することは、タイムスポーツであるラグビーでは意味がない」と指揮官は言い切る。
東福岡には、強制的な体重測定や食事のノルマはない。チームで受講している年3回の栄養セミナーで体づくりに欠かせない栄養と食事の摂り方を選手たちが学び、「主体性のある食育」をモットーとしている。
WTB堀田南雄斗(3年)は野菜不足解消のため、毎朝1杯の青汁を飲み、入学時から体重15キロ増を果たした。寮生活を送るU-18日本代表のPR小林賢太(3年)は、兵庫の実家から母お手製のおかずを定期的に送ってもらい、チーム最重量の110キロをキープ。「ハンバーグと、塩麹でつけた焼肉がおいしいです」と遠くから支えてくれる両親に感謝する。No.8で主将の福井翔大(3年)は毎日、特大の弁当を2個持って行き、やせやすい体をコントロールしてきた。
全国大会出場決定後の栄養セミナーでは「(花園)大会中の、ホテルでの食事の取り方」を、全部員136人が受講した。「試合当日、炭水化物を多く食べた人の方が2、3キロ多く走れた」というデータをインプットし、「大会中に控えめにしたいメニュー」として、「揚げ物、生もの、食物繊維の多いもの」を学んだ。自己管理ができた今大会は、体調不良者ゼロというコンディションで試合に臨むことができたそうだ。
正しい食事は一生のテーマ
連覇の夢は叶わなかったが、選手たちには次の目標がある。福井は卒業後、トップリーグのパナソニックにプロとして入団。他のメンバーは大学ラグビー界に進む。彼らが見据えるのは2019年日本W杯、20年の東京五輪(7人制)の代表入り。一生のテーマでもある「正しい食事」を身に付け、世界で戦える選手へ。夢への挑戦はまだまだ続いていく。【樫本ゆき】