フィギュアスケート女子の人気選手が、摂食障害の治療を理由に平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)出場を断念したことで、米スポーツ界は無理なダイエットをすべきでないと警鐘を鳴らしている。
2014年ソチ冬季五輪のフィギュアスケート団体銅メダリストで、14年、16年と2度の全米女王に輝いた人気選手グレーシー・ゴールド(22)。「米国のフィギュアスケート人気回復の救世主」と言われるほど、華のある選手だったが、16年世界選手権で4位になった直後から度々、体重の増加が話題となり、メンタル面を心配する声が上がっていた。
「太っているフィギュアスケーターはいない。昨シーズンからずっとその問題に苦しんでいる」と以前のインタビューで語っていたが、昨年10月、うつ病や不安症、摂食障害の治療のためにグランプリ(GP)シリーズに出場しないことを発表。その後、五輪選考会を兼ねる全米選手権欠場を決めた。
全米では、年間およそ5万人が極端なダイエットが原因で命を落としている。米スポーツ医学会によると、スポーツ界では特に体型や体重を気にする競技の女子選手が摂食障害を患うことが多いという。フィギュアスケートだけでなく、体操、新体操やシンクロナイドスイミングなど審美系スポーツの選手が他競技に比べるとリスクが高いと言われており、体重の増加を気にして食事を抜いたり、外見が美しく見えるように食事を制限したりすることのないよう警告している。
ゴールド以外にも、米国では他にも五輪選手たちが摂食障害を告白している。
■キャシー・リグビー(体操)
現在は女優としても活躍するリグビーは、15歳で初出場した1968年のメキシコシティー五輪のトレーニングキャンプ中に神経性過食症を発症。その後は肥満への恐怖と不安から神経性食欲不振症になり、2番目の夫のサポートによって回復する81年まで摂食障害に苦しんだ。
■ミスティー・ハイマン(競泳)
00年シドニー五輪200mバタフライの金メダリストのハイマンは、USAトゥデイ紙に高校生の時から10年以上、過食症と闘ってきたことを告白。「体型の問題だけでなく、より良い結果を出さないという精神的な不安も原因。摂食障害を克服するには、それ以外のメンタル面でのチャレンジが必要だった」。
■ナンシー・ケリガン(フィギュアスケート)
94年リルハンメル冬季五輪直前にライバル選手から襲撃されたことで一躍有名になったケリガンは「結果を出すため、自身をコントロールするために食べ物を避けるようになった」と告白。「カロリー不足で体が疲れやすくなり、ある時、このままでは五輪に出られないと気がつき、食べる努力をした」として、銀メダルに輝いた。
【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】