<ピョンチャン五輪:スピードスケート>◇21日◇女子団体追い抜き決勝

 日本女子が前回覇者オランダとの決勝を2分53秒89の五輪新記録で制し、悲願の金メダルを獲得した。

金メダルを獲得した選手たちを出迎えるデビット・コーチ(撮影・黒川智章)
金メダルを獲得した選手たちを出迎えるデビット・コーチ(撮影・黒川智章)

 オランダのプロコーチだったヨハン・デビット氏(38)が、低迷が続いていた日本スケート界を救った。15年春、ナショナルチームのコーチ、スタッフを集めた新体制最初のミーティングで、参加した全選手に目標を言わせた。タイム、大会での順位…。だが、すべての答えに対し「イージーだ」と答えた。日本に足りないと感じたのは、戦う意識とフィジカルの強さ。「殻を破れ」と意識改革を求め続けた。

 体脂肪率は男子が9~10%、女子は20%を目指させた。宿舎で差し入れのドーナツを食べている選手を見つけると、「金メダルを取るつもりはないのか」と顔を真っ赤にして怒った。食事の量、睡眠時間も管理。延々と続く猛練習に、選手から「中学生の部活みたい」と不満の声も広がった。

 だが、ひるむことなく、日本スケート連盟にも変化を求めた。遠征時の乗り継ぎ時間の無駄を指摘し、トレーナーも増やすよう要望した。予算を理由に拒否されても、「自分はそういうコーチだ。それを言うのが自分の仕事だ」と簡単には引き下がらなかった。

 結果が出るとすべてが良い方向に流れ始めた。16年シーズン、どんどん記録を伸ばす日本選手にライバル国も驚いた。選手の中にあった甘さは消え、目指してきた戦う集団へと生まれ変わった。高木美帆は指揮官について「勝負に対して貪欲で、大切にされていると思う部分がたくさんある」と信頼を語った。日本スケート連盟は22年北京五輪に向け続投を要請している。湯田淳強化部長は「日本にとって素晴らしい出会いだった。しがらみがなく、妥協しないヨハンだから変えられた」と嵐のような4年間を振り返った。

(2018年2月22日付日刊スポーツ紙面掲載)