群馬で生まれ育った食材にこだわった料理を出している飲食店は都内に約40店もあります。その中でも、目黒区にある「ナルカミ」は、桐生出身の店主の「群馬愛」にあふれています。そして、タレント井森美幸(49)が推奨した群馬の郷土料理「おっきりこみ」を、都内で食べられる店も紹介します。
食材も酒も産地にこだわり
群馬にこだわり抜いた店だった。店主の小野里全芳さん(48)は桐生市出身で、東急東横線の学芸大学駅から徒歩4分の現在地に2009年(平21)に開業した。30歳から本格的に料理の道を歩み始めた。日本を飛び出し、海外で修業していた時、無性に食べたくなったのが、日本料理、特に地元群馬の料理だった。
「海外で食の苦労をした分、日本の料理の良さがよく分かった。そして、子供の頃に食べていた地元の懐かしい料理を思い出した」。帰国して、店を出す時にこだわったのが「群馬」だった。「何か特徴を出したくて、群馬しばりで考えた」。メニューには群馬の料理が並ぶ。ソースかつ丼、上州鶏めし、ポテト焼きそばなど、小野里さんもよく食べた郷土の料理だ。
「桐生には織物などの工場がたくさんあって、工場で働く人のエネルギー源として、ソースかつ丼はよく食べられていた」。自慢のソースかつ丼は、豚モモ肉を薄切りにしたかつを自家製の特製ソースに浸し、衣がサクサクとして食感もいい。上州鶏めしは、群馬で弁当というと、誰もが名前を挙げるほど親しまれている登利平「鳥めし」弁当にトリビュートしたナルカミ風「鶏めし」として出している。独自のタレが染み込んだ鶏肉はとても柔らかく、ご飯との相性もいい。
ポテト焼きそばは群馬では一般的で、桐生には「鹿の子」という、地元の人に愛された焼きそば店があった。「昔から桐生では、子供におなかいっぱい食べさせようと、モヤシと蒸したジャガイモを入れていた。麺にもこだわって、酒かすを練り込んだものを使っています。今はない『鹿の子』の味を受け継いでいます」。
食材は野菜はもちろん、赤城牛、群馬銘柄豚、しょうゆやみそなどの調味料も群馬のものばかりだが、こだわりは料理だけにとどまらない。日本酒も群馬の地酒がそろい、桐生出身の人気ソムリエ金井麻紀子さんがセレクトしたワインが並んでいる。カウンターやテーブルも群馬産の木材が使われ、インテリアとして壁に飾られる絵は、桐生出身の現代美術家山口晃氏の作品。店内にBGMとして流れるのは、同じ桐生出身のピアニスト山中千尋さんの演奏だった。
店名の「ナルカミ」は桐生にある鳴神山に由来する。「上州三山(赤城山、榛名山、妙義山)ほど有名ではないけれど、鳴神山は、世界でこの山にしかないというカッコソウが咲くことで有名なんです。僕も、ここにしかできない料理を出していきたい」と話している。【林尚之】
銀座の名店で限定発売
井森美幸が群馬・下仁田の実家でもよく食べていたという「おっきりこみ」は幅広の生麺を、旬の野菜やキノコなどと一緒に煮込んだ、群馬の郷土料理。石臼が庶民に広まった江戸時代中期以降に、群馬で「おっきりこみ」が食べられるようになったと言われる。
そこで、都内で食べられる店をリサーチしたところ、銀座にある群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」にほど近い、歌舞伎座の裏側にあった。「花山うどん」。1894年(明27)創業の群馬・館林に本店がある老舗うどん店で、銀座には16年に進出した。うどん日本一決定戦で3年連続で優勝している名店で、「おっきりこみ」は冬季限定の上、数量にも限りがあるとあって、早い者勝ち。そこで、午前11時半の開店直後に向かった。
ランチは「上州赤城鶏と冬の旬菜」のしょうゆ仕立てと白みそ仕立ての2種類。ディナーでは「上州赤城鶏のゆず塩」が食べられる。そこで頼んだのが、しょうゆ仕立て。鬼ひも川とうどんの選択で、幅5センチの幅広麺の鬼ひも川を選んだが、もっちりとした麺に、脂の乗った鶏もも肉、シイタケや野菜のうま味が凝縮した汁がよく合って、体も心もほっこりと温まった。
水沢うどんランチも
群馬の食材にこだわった郷土料理を都内で食べられる飲食店は、「ナルカミ」「花山うどん」のほか、創作料理の白金「このむ」、上州牛を安価に提供する浅草「ぐんま育ち」など約40店ある。また、銀座「ぐんまちゃん家」では、2階スペースでグルメイベントを行っており、3月6~7日には、「稲庭」「讃岐」と並ぶ日本3大うどんの1つ「水沢うどん」ランチを開催。井森美幸も「贈答品として有名です」という水沢うどんを500円で食べられる。午前11時から午後3時までの予定だが、うどんがなくなり次第終了する。
【ナルカミ】 目黒区鷹番3の21の18。営業時間は午後5時から11時まで。定休日は火曜。電話03・3794・9041。
【花山うどん】 中央区銀座3の14の13。営業時間は平日はランチが午前11時半から午後4時まで、ディナーが午後6時から10時半まで。土・日・祝はランチのみで、午前11時から午後4時まで。電話03・6264・7336。
(2018年2月24日付日刊スポーツ紙面掲載)