コロンビア代表MFハメス・ロドリゲス(26=Bミュンヘン)は2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会で6得点を挙げ、得点王になった。ロシア大会の初戦で日本の前に立ちはだかる男は、幼少期どんな選手だったのか。元プロサッカー選手で、二人三脚で歩んできた育ての父ファンカルロス・レストレポさん(51)の存在が大きかった。

14年6月、W杯ブラジル大会 決勝トーナメント1回戦 コロンビア対ウルグアイ 前半、左足を振り抜き先制ゴールを決めたコロンビアのハメス・ロドリゲス
14年6月、W杯ブラジル大会 決勝トーナメント1回戦 コロンビア対ウルグアイ 前半、左足を振り抜き先制ゴールを決めたコロンビアのハメス・ロドリゲス

14年6月、W杯ブラジル大会 1次リーグ 日本対コロンビア 後半、チーム4点目のゴールを決めるコロンビアのハメス・ロドリゲス(撮影・PNP)
14年6月、W杯ブラジル大会 1次リーグ 日本対コロンビア 後半、チーム4点目のゴールを決めるコロンビアのハメス・ロドリゲス(撮影・PNP)

サッカー優先、育ての父が徹底サポート

 コロンビアの首都ボゴタから西に約120キロ。アンデス山脈の山あいにある標高約1300メートル、人口約50万人の街イバゲでロドリゲスは育った。実父はプロサッカー選手だったが、3歳で両親が離婚。その後、母ピラールさんは同じく元プロ選手のファンカルロスさんと再婚した。左足で器用にボールを扱う才能に気づいた継父が、才能を伸ばそうと力を注いだことで、世界のスーパースターに上り詰めることになる。

コロンビア地図

 「普通3歳の子供はつま先でボールを蹴るが、ハメスは足の甲や足の内側、外側も使って蹴っていた。ダイヤモンドの原石だと感じ、天から与えられた才能を伸ばしてあげたいと思ったんです」

 多方面から育成を図る「ハメス・ロドリゲス・プロジェクト」を立ち上げたのはロドリゲス6歳の時。地元チームでプレーしていたが、ファンカルロスさんはコーチ2人と契約し、チーム練習のない週3日、苦手の右足キックやヘディングのレッスンを受けさせた。自身も栄養学やスポーツ医学、心理学などを勉強し、徹底的にサポートした。

 練習ではおとなしく口数の少ない少年だったが、試合になると別人だった。「完璧主義者で、他の選手にも厳しいことを要求した」。憧れの選手はバルデラマ、ジダン、ロナウジーニョ。「家では明るく、ダイナマイトのようだった」。家の中でもボールを蹴って陶器やテレビなどを壊しては母に怒られた。試合の遠征には学校の許可が必要だったが、許可が出ないと何度も転校させた。それほどサッカー優先の生活だった。

鶏肉、牛肉、魚が中心、フルーツも

 食事は鶏肉、牛肉、魚が中心。プロテインを飲ませ、試合後にはフルーツサラダも用意した。12歳からはジムに通わせた。実父は身長168センチ、母は157センチ。当時はガリガリで背も低かったが、少しでも伸びるようにと夜8時就寝を守らせ、1日12時間以上寝させたという。180センチまで伸びたのは、両親のサポートがあったからだった。

 ロドリゲスの存在が知られるようになったのは12歳の時。全国大会で優勝してMVPと得点王に輝き、プロからオファーが届いた。第2の都市メデジンの強豪2クラブ、アトレチコ・ナシオナル、インデペンディエンテ・メデジンと、2部のエンビガド。先の2クラブは仕事を用意し、家族への手厚いサポートも約束したが、ファンカルロスさんは、唯一「プロジェクト」継続を容認してくれたエンビガドとの契約を選んだ。その後、アルゼンチン、ポルトガルに渡ってプレーした際も一緒に住み、21歳まで生活を支えた。

 「ハメスも『ファンカルロスがいたからここまで来られた』と言ってくれている。うれしい限りだよ」

育ての親であるファンカルロスさんは日本戦のスコアを2-1でコロンビアの勝利と予想(撮影・福岡吉央)
育ての親であるファンカルロスさんは日本戦のスコアを2-1でコロンビアの勝利と予想(撮影・福岡吉央)

 今でも試合は全てテレビで観戦し、電話でアドバイスを送っている。「今回のW杯では最低でも準決勝までいって、MVPと得点王を取ってほしい。将来的にはバロンドールも獲得してほしいね」。14年に続く息子の活躍を願っている。【福岡吉央通信員】

 ◆ハメス・ロドリゲス 1991年7月12日、コロンビア・ククタ生まれ。3歳からイバゲに住む。06年に当時2部のエンビガドに加入、15歳でプロデビュー。08年にアルゼンチンのバンフィエルド移籍。10年からポルト-モナコ-レアル・マドリードと渡り歩き、17年からバイエルン・ミュンヘン。左利き。

 ◆コロンビア共和国 南米の北西部に位置し、面積は日本の約3倍。人口約5000万人。アンデス山脈が国土を縦断し、首都ボゴタは標高約2600メートル。公用語はスペイン語。コーヒー、エメラルド、カーネーション、バラの産地として知られる。音楽大国でカリサルサが有名。歌手シャキーラも出身。W杯は2大会連続6回目の出場で、前回大会は8強。

(2018年5月1日付日刊スポーツ紙面掲載)