Jリーグ柏レイソルユースの選手たちの胃袋を支えるのはベテラン主婦で構成されたスタッフ。食べ盛りのサッカー男子たちは“お母さんのごはん”で食べることの大切さを理解し、食に対する意識を高めている。
たくさん食べてもらえる献立が基本
U-10からU-18まで7つのカテゴリーを有する「柏レイソルユース」。選手たちは平日の練習後、練習場と同じ日立柏総合グラウンド内にある食堂「レストランピアノ」で夕食をとっている。
午後7時、レストランピアノに練習を終えたU-18の選手が3人現れた。この日の食事開始予定は7時半。おかずの配膳はまだ始まっていなかったが、セルフサービスのごはんとみそ汁、納豆をトレーにとると猛然と食べ始める。よほどおなかがすいていたのだろう…。定刻になると制服姿の男子高校生たちが続々と集まり、8時ごろには小学生たちも加わってテーブルはほぼ満席となった。
最大140人の食べ盛りのサッカー男子たちの胃袋を支えるのは、主にベテラン主婦で構成されたスタッフ。メニューを考案する三宅真理子さん(61)は、「栄養バランスはもちろん意識するが、たくさん食べてもらえる献立が何よりの基本」と話す。
練習後すぐに食事を提供
この日のおかずは肉野菜炒め、カレーコロッケ、マカロニサラダ、シューマイ(写真)。U-18になれば、週5日ここで夕食をとる。「自宅の食事と同じように、毎日食べていて飽きないように」(三宅さん)との思いを込めた“お母さんのごはん”を、選手たちは平らげていく。
同クラブでは、スタジアム、練習場、クラブハウスがすべて日立柏総合グラウンド内にある強みを生かし、Jリーグ黎明(れいめい)期の1990年代前半よりトップチーム所属選手への朝昼2食の提供を開始(夕食は希望制)。数年遅れでユースでも夕食を提供するようになった。
ユースを統括する渡辺毅アカデミーダイレクター(45)は、「東京や埼玉、茨城から通っている選手たちは夕食の時間が午後10時を過ぎることも。体づくりのためにも、練習後すぐに食事を食べられるようにしたかった」と経緯を説明する。
選手自身が食への意識を高める
テーブル上に栄養に関するメモ書きを立てる、保護者と選手を対象にした栄養セミナーを年1回行うなどの活動も行っているが、チームからの食事指導はそれほど厳しいものではない。「誰かに言われたから食べるのではなく、選手たち自身が食べることの大切さに気づくことが大切だから。自立した選手を育てるために、スタッフたちは彼らに気づきを促す役割を担っている」(渡辺氏)。
特に小学生は好き嫌いも多いが、保護者の協力のもと食べることの大切さをゆっくりと理解させた結果、食事を残す選手はゼロ。苦手なものが出ても、食事終了時間ギリギリまで粘り完食していくという。
MF鵜木郁哉(16)は小学5年からレイソル一筋。入団当初を振り返り「ピアノのごはんはとにかく量が多かった」と笑いつつも、「レイソルに入るまで栄養を気にしたことがなかった。夏場にバテないなど変化を感じるようになった」と話す。
現在はセミナーなどで得た知識をもとに、カルシウム吸収率が高い就寝前に乳製品をとり、試合日はウオーミングアップ3時間前にエネルギー吸収の高いパスタをとるなど意識の高さが光る。
GK志賀一允(17)の課題は朝食。「セミナーで朝の栄養が一番大切だと聞いた。寝坊しがちなのでしっかりとりたい」と話した。
日本代表GK中村航輔を筆頭にトップチーム所属選手の約半数がユース出身。本年度は4人がユースから昇格した。胃袋から“レイソル育ち”の少年たちがJの舞台を夢見て躍動している。【青木美帆】
■トップチームはバイキング
ユースの夕食が定食方式なのに対し、トップチームはバイキングスタイル。ごはん、みそ汁に加え、主菜と副菜が5~6種類、デザート、フルーツが常に食卓に並ぶ。「ユースからトップに昇格した選手たちは『これからは自分でメニューを選べるんだ』とうれしそうですね」と三宅さん。
試合日も試合前の軽食から試合後の夕食まですべて提供する。人気メニューはカレー。「試合後でもがっつり食べます」(三宅さん)。ユースの選手たちも同じで、鵜木も志賀も「やっぱりカレー。すべてが好き。みんな大好き」と頰をゆるませた。
◆柏レイソルユース 1986年、日立サッカースクール柏として開校。著名な出身者に酒井宏樹(マルセイユ)、伊藤達哉(ハンブルガーSV)らがいる。U-18は世代最高峰の「高円宮杯JFAU-18プレミアリーグ」に所属し、6月14日現在EAST7位。2015年2月より日体大柏高と相互支援契約。U-18に所属する39人が同校に通っている。
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(2018年6月14日付日刊スポーツ紙面掲載)