熱戦が続く高校野球北福岡大会。16日の準々決勝で東筑紫学園に6-5で競り勝った折尾愛真(おりおあいしん)の試合終了後の風景は、驚くものだった。
球場の外で喜びに沸く選手の輪の中に運ばれてきたのは、5升炊きの業務用炊飯器。着替え終わった選手は次々に自分の容器にご飯をよそい、その場に座り込んでご飯を食べ始めた。
空腹の時間を長くしない
創部初のベスト4入りを果たし、初の甲子園出場まであと2勝。旋風を巻き起こしている折尾愛真の強さは「空腹の時間を長くしない補食」にあったのだ。
「温かいご飯がすぐに食べられるのがいいです。今年の夏は暑くてバテてしまうので、体重を減らさないようにしっかり食べます」。1番打者で三塁打を打った長野匠馬(3年)がご飯を頬張りながら話した。昨冬から12キロも体重が増えたが、三塁までの快走に「キレは失っていません!」。春の2番から今夏は1番として活躍。「自分が打って勢いをつけたい」と燃えている。
5番の野元涼(3年)は、昨冬の68キロから一時、92キロまで増量し、今はベストの85キロをキープしている。最速143キロの速球を投げ、打っては初戦の玄海戦で場外弾を含む、通算27本塁打を打つ中心選手だ。この日は先発登板し、3回無失点。打者としては2安打を放った。野元は「夏場でも全員、食欲が落ちないのがいい。今日はセーフティスクイズも決められてチームに貢献できました」と機動力もアピールした。
1人1日計7合のご飯
昨冬、グラウンドに炊飯器を持ち込み、練習中に「1時間1回の補食」をとって、1人1日合計7合のご飯を食べた。寮生活を送る野元は毎日体重測定をし、増量していく過程を楽しみにしていた。「年末に実家に帰った時、地元の友達に『どうしたんや』『別人やん!』と驚かれました(笑)。ホームランの飛距離も伸びて満足です」とその効果を話した。
選手たちは、お米をただガムシャラに食べているわけではない。食アスリート協会所属のインストラクター、鬼塚そのみさんから栄養指導を受けている。ラグビーなど他競技もサポートする鬼塚さんは「連戦はとにかくリカバリーが大事。何をどう食べるかが大切なので、試合後すぐの補食はすごく良いと思います」と話した。失ったエネルギー源をただちに補給し、次への試合へ準備を整えている。
今年はプロ注目のスラッガーで「ゴジラ2世」の異名を持つ松井義弥主将(3年)を筆頭に、強打で打ち勝つ野球が魅力。エネチャージ効果で、球史に新たな名を刻もうとしている。【樫本ゆき】