全国高校ラグビー大会優勝5回の目黒学院ラグビー部は、約30年前から変わらない食の伝統をバックに、2年連続花園出場と日本一が目標。寮で提供される食事は、保護者が当番制で作っている。
ラーメンどんぶりほどの器に盛られた、マンガのように山盛りのごはん。練習場から徒歩20分ほどの場所にあるクラブハウス(選手寮)で、目黒学院ラグビー部員たちはそれをきれいに平らげていく。主将のCTB大島暁(3年)は一番乗りでおかわり。「今日は調子いいっす!」と笑った。
部員の7割がラグビー未経験
70人の部員のうち、実に50人がラグビー未経験で入部。東京都代表に選出された大島を筆頭に、フィフティーンにも高校からラグビーを始めた選手が8人いる。竹内圭介監督(41)は「うちは経験者が少ないので、うまさや速さで戦うチームと勝負するのは難しい。とにかく体のぶつけ合いだけは負けられない」との方針から、体づくりを重視した強化を進めている。
スクラムを組むFW陣8人の平均体重は93キロ。1時間程度のウエートトレーニングを毎朝の日課とし、トレーニング後と午後の練習後の2度、プロテインを摂取する。
30年伝統の食文化で体づくり
もちろん食事も体づくりに欠かせない大切な要素だ。クラブハウスで供される食事は、すべて部員の母親たちが提供する。3年生の母親が持ち回りで献立を作成し、食材を仕入れ、全学年で4人一組のローテーションを組んで調理。これは竹内監督が同校の部員だった約30年前から変わらない伝統だという。
ショウガ焼き、ハンバーグなど肉を使った主菜と、副菜、汁物、そして1人あたり2合以上にもなるごはんが献立の基本。大量のごはんを食べ進めやすくするために、主菜の味付けは少し濃いめにしている。
食事作るお母さんに感謝
業務用の巨大な調理器具を駆使し、大飯食らいたちの食事を作ることに最初は戸惑うそうだが、予算をやりくりし、冷蔵庫の食材を余さず使い切ることはベテラン主婦にとってはお手の物。「お勤めの人も多く大変だが、息子たちのためにできることは協力していこうという思い」と父母会世話役の小高眞弓さん。竹内監督は「調理が終わっても、選手たちが帰ってくるまで待って温かいものを出してくださる。部員たちにわが子と同じように接してくれる」と感謝する。
取材に訪れた日の夕食は、鶏の照り焼き、マカロニサラダ、ワカメと春雨のスープという献立。午後7時に全員が食堂に集まり、「当番のお母さん方に感謝していただきます」とのあいさつで食べ始めた。全員がものすごい勢いで完食していくかと思いきや、中には箸の進みが異様に遅い部員も。食が細く増量に苦戦している下級生たちだ。
1年で15キロ増量に成功も
昨年1年生ながら全国高校ラグビー大会を経験したSH前川李蘭(2年)は、他校の選手たちと比べて自分の体が非常に小さいことに衝撃を受けたという。その後、食事に対する意欲が向上し1年で15キロの増量に成功したが、「食事がどの練習よりつらい」と苦笑する。
この日は7時50分に食事終了の号令がかかったが、その後30分ほどかけて完食。就寝時間と消化時間を考慮して、おなかが落ち着いた消灯前に食パンを1枚食べて補うよう指導されている。
ルーティン献立が選手のスイッチに
目黒学院にはユニークな食文化がある。1つは大会期の食事。木曜日がステーキ、金曜日がトンカツ、土曜日が鍋。日曜はカレーとルーティン化されているのだ。「栄養学的に正しいか分からないけれど、選手たちのスイッチにはなっている」(竹内監督)。
もう1つは週に数回の「解散日(実家に帰る日)」の食事。地方や海外からやって来た選手たちはクラブハウスに残り、焼きそばやラーメンなどを自分たちで調理。特に焼きそばは、かなりクオリティーが高いそうだ。
チームの目標は花園への連続出場と日本一。「自分たちで考えてアクションを起こそうとする力が強い」と竹内監督が評する選手たち。14日に東京都予選の初戦を迎える。【青木美帆】
◆目黒学院高等学校ラグビー部 1959年(昭34)創部。OBに元日本代表松尾雄治氏ら。留学生を積極的に受け入れており、現在はトンガ人3人、タイ人1人が在籍。アタアタ・モエアキオラ(2014年度卒業)は今年、東海大ラグビー部で創部初の外国人主将に就任した。40年(昭15)前身の東京機械工科学校が開校した。98年(平10)現在の校名に。所在地は東京都目黒区中目黒1の1の50。
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(2018年10月11日付日刊スポーツ紙面掲載)