「うどん県」で有名な香川県が、今度は「オリーブ県」として消費拡大と認知度アップを図る。全国の9割以上の生産量を占める同県では15日、日本で初めてオリーブの木が植えられて111年を迎える。昨年、日本で初めて新品種も開発した。ほかにも、オリーブそうめん、エサとしてオリーブを使う養殖のクルマエビや牛肉など、使い道はさまざまだ。すでに効能は評価されており、特産品としての注目度は大きい。このほか、他府県の認知度拡大イベント例も紹介する。
瀬戸内海を臨む斜面や街道沿いなど、オリーブの木は至る所に植えられていた。県内には約20カ所、中でも小豆島は大小10カ所近くの農園があるという。
香川県農業試験場小豆オリーブ研究所では、新品種「香オリ3号」「香オリ5号」を日本で初めて開発した。一昨年8月、登録を農林水産省に出願。同年暮れに受理された。早ければ、5年後には収穫されるという。
もともと、香川県と三重県、鹿児島県が1908年(明41)、明治政府の指定でオリーブの苗木を植えた。日露戦争に勝って得た北方漁場で、海産物を保存するオイル漬けの原料用に、生産する必要があった。このうち、香川県だけ収穫できた。戦後、一時期は外国産の輸入化の波に押された。地中海沿いの広大な敷地で収穫するスペイン、イタリア、ギリシャなどに、生産量では今も遠く及ばない。
それが、昨今の健康ブームで効能が注目され始めた。オリーブオイルに含まれるオレイン酸の「整腸作用」「美肌効果」「抗酸化作用」などだ。米など、ほかの農作物と同様、「顔が見える」国産品への信頼度も追い風となった。
小豆島で「空井農園」を経営する空井和夫さん(72)は、「海外と違ってこちらは家内制手工業。台風などの天災にも絶えず左右される。値段は高いかもしれないが、商品には自信を持っている」と胸を張る。オイルを飲むだけなら辛味や苦味を感じるが、かければそれがなくなり、素材のうま味を引き出してくれる。空井さんは納豆やヨーグルトに混ぜている。「魔法の調味料」とも言い切った。
小豆島の「中武(なかぶ)商店」には、オリーブを練り込んだそうめんがある。代表の中武義景さん(65)は13年前、自社の敷地に植樹した。「オリーブの知名度アップとともに、和食と合うこともPRされ始めた。まだまだ需要は伸びる」と張り切る。
人間にいいものならほかの動物にもと、県内の多くの業者もオリーブの利用価値を見いだしている。まんのう町の「讃岐まんのう 畑牧場」では、産業廃棄物だったオリーブのしぼりかすを牛の餌に使った。赤身がしっかりついて、肉質を高めた。三豊市の「仁尾産商」では細かく砕いたオリーブをクルマエビに食べさせて、プリプリとした食感を出している。贈答用として全国展開している。
オリーブは、耕作放棄地の再生事業にも役立っている。三豊市の「三豊オリーブ」では、後継者不在のミカン農家の敷地に植樹している。その数、約3000本。1回に400キロ収穫し、40リットルのオイルを抽出する。宮武孝季管理部長(34)は、「日本産のオイルはマイルド。最近は福島県いわき市や静岡県、岡山県、長崎県などでも栽培されているが、香川県には他県にないノウハウがある」と言う。
殖産興業策から始まった、111年のオリーブ栽培の歴史。その蓄積は大きい。今では国際品評会で権威ある賞も続々と受賞している。浜田恵造知事(67)以下、官民一体で「オリーブ県」として知名度を上げる。【赤塚辰浩】
(2019年3月3日、ニッカンスポーツ・コム掲載)