<スポーツクライミング・リードジャパンカップ>◇2日◇男女予選◇千葉・印西市松山下公園総合体育館
壁に登れた高度を競う「リード」のジャパンカップが開幕し、日本選手権として開催された昨年大会女王の森秋彩(もり・あい、15=茨城・手代木中)は、予選5位で3日の準決勝に駒を進めた。
森は1ルート目で37+の高度を獲得すると、2ルート目完登。昨季までは154センチ、40キロほどと体の軽さをつかってすいすいと登っていた15歳が、1年間で体重を8キロ増やして、力強い登りに進化を遂げた。
今までもリードの世界ユース選手権ユースBで優勝するなど結果を残してきた森は今季、ワールドカップ(W杯)に出場できる年齢に達した。W杯では、国内大会の課題よりもパワーを使った登りを求められるものが多く、BMIのチェックをされることもある。「世界で戦うためには体の軽さだけじゃだめだ。パワーをつけよう」と増量に一念発起した。懸垂や腕立て伏せ、25キロの加重をつけてのスクワットや、ジャンプをして高いボックスに跳び乗ったりする燃焼系のトレーニングも新たに取り入れた。「下半身を中心に鍛えてきたのは、自信にもつながっている」。
食事も、まずは茶わんをどんぶりに変えた。家族でよく行くという牛丼店では、小食だった昨年までは1人前の定食も食べきるのがやっとだったが、徐々に食べられる量も増えた。「チャレンジメニュー」と呼ばれる、ご飯650グラム、肉510グラムとも言われるキング牛丼、総重量1・5キロ程度のキングカレーも「どっちも食べた」と笑顔で言う。タンパク質多めの食事を取り入れ、自分でも率先してスポーツ栄養の本を読んで勉強した。
増量とともに、体を追い込む練習も積んだ。「パンプ(腕などの筋肉が疲労すること)してからどこまで1手を伸ばせるか」。軽々登っていた昨季よりもパンプするタイミングは早くなったものの、最後まで粘れる体力を手にした。今大会の予選2ルート目、森は壁の中央付近できつくなっても、頂上まで登り切った。「昨季はパンプしたら次の一手で落ちていたけれど今は1回呼吸を整えられる。リードで壁の真ん中あたりでまずいなと思っても、完登できる力がついた」と成長も実感する。
森が目標とする選手は、パワーを持ち味とする昨季ボルダリングW杯年間女王の野中生萌(みほう、21=XFLAG)。「登りの感じとか筋肉とか、かっこいい」。世界で戦う体に進化する15歳は、24年パリ五輪を見据える。パリ五輪でもスポーツクライミング競技の採用が決定し、競技方式はボルダリングとリードの2種目の複合に変更されることも決まった。「五輪は限られた人しか出られないので、出てみたい。パリ五輪は苦手なスピードも別になったので、今はパリの方を狙ってます」。一回り大きくなった15歳は笑みをこぼし、さらなる成長に向けて登り続ける。【戸田月菜】
◆森秋彩(もり・あい)2003年(平15)9月17日、横浜市生まれ。6歳の時につくば市でクライミングを始め、15、16年ジュニアオリンピック杯で連覇。16年は全日本ユース選手権のリード、ボルダリング2冠に輝き、リードのジャパンカップでシニア初タイトルを獲得した。17年世界ユース選手権のリードユースBで優勝。18年ボルダリングジャパンカップ準優勝、リード日本選手権優勝。154センチ。
(2019年3月2日、ニッカンスポーツ・コム掲載)