今春のセンバツ高校野球大会(23日開幕)に出場する山梨学院高の野球部ナインは、練習後に飲み干す1リットルの牛乳で、肉体改造に成功しました。牛乳パワーで、甲子園での優勝に猛アタックします。
練習直後の牛乳を日課に
山梨学院は牛乳パワーでセンバツ優勝を狙う。午後8時。練習が終わり食堂に集まった選手たちは、一目散に冷蔵庫から取り出した1リットルパックの牛乳をグイグイ飲み干した。
吉田洸二監督(49)は、清峰(長崎)から山梨学院に異動するにあたり、2つのことを変えたかったと言う。「1つは広い室内練習場を人工芝にすること。もう1つは寮の食事。アスリート食にしたかった」と当時を振り返る。吉田監督の要望を受け入れ、寮の食事は管理栄養士がメニューを作成し、それを基に調理。それまで必ず1品ついていたデザートをやめ、1人1リットルの牛乳を用意した。
「清峰は県立だったので、いかにお金をかけずに体を大きくするかを勉強し、試しました」と、吉田監督。漁協からいりこを安く購入し、ミキサーで粉に。それをおにぎりにまぶして食べさせたり、養鶏場から直接購入した卵を、ゆで卵にして練習の合間に食べさせたこともある。
そんな中でたどり着いたのが、牛乳だった。「近所のスーパーから安売りの牛乳を購入して試してみたら、すぐに成果が表れた。骨を強くするのはもちろん、栄養バランスも優れていた」。練習直後に牛乳を飲むと血糖値を下げ、体を内側から冷やす。アイシングの効果もあった。
練習直後に必ず牛乳を飲むことが日課となり、当時の清峰には、選手の合言葉があった。
『着替える前に牛乳、練習後の彼女へのメールの前に牛乳!』
同時に行うトレーニングの効果もあり、体はみるみる大きくなった。09年、センバツ出場時には、他校から「清峰は体が大きい」とささやかれ、大会では県勢初の甲子園優勝。応援してくれる近所の酪農家が安く牛乳を提供してくれるようになった。吉田監督が目指していた、「安く、効率良く栄養をとる」それが牛乳だった。
その経験を、山梨学院でも取り入れた。選手の体形によって飲む量は変わるが、基本的に1人1日1リットルが目安。「寮の食事がいいこともありますが、体重があっという間に増えました」と効果はすぐに表れた。吉田監督が山梨学院に赴任して以来、甲子園には3回出場、春、秋の山梨県大会では7回優勝、2回準優勝。17、18年と夏の甲子園では2年連続、出場校の平均体重が2位。全国的にも体の大きいチームを証明した。
主将も体の変化を実感
「牛乳を取り入れてから、夏場の馬力、踏ん張りが利くようになりました。野球のスタミナがつくんです」。中には牛乳が苦手な選手もいるが、ココアを入れたり味を工夫して1リットルを飲み干すという。「毎日の積み重ねが体の変化につながってきている。パワーもつきましたし、ケガも少なくなったと思います」と、相沢利俊主将(2年)も効果を実感している。
「私たちの身近には栄養がたくさんある食材が多い。牛乳は栄養バランスがよくコスト面もベスト。少ない費用で最大の効果を発揮する。全国のどの高校球児も取り組めるでしょう」と笑顔で話す吉田監督。山梨学院は牛乳パワーで優勝に猛アタックする。【保坂淑子】
■笑顔あふれる食事「消化にいいし腸の働きも活発に」
山梨学院の夕食の時間は、笑顔であふれている。取材日は、早く食べ終わった2年生が選手たちの前に立ち一発芸を始め、大爆笑に包まれた。「いつもやっているんです。うちの食事は楽しいですよ」と相沢主将。
近年、中学の強豪チームから高校でも、大きい保存容器にご飯を詰めムシャムシャ食べる姿をよく目にする。吉田監督は「食事は楽しいもの。ご飯くらいおいしく食べさせたい。その方が消化にもいいし腸の働きも活発になる」と笑い付き食事の効果を話す。だから山梨学院では1日のご飯を何杯、何グラム食べるという決まりもない。
料理長の矢崎喜久夫さん(59=エームサービス)も、季節のイベントには趣向を凝らしたメニューで選手をバックアップ。節分にはちらしずし、昨年のハロウィーンでは、オムライス50人分を、卵でカボチャの顔を作る手の込みよう。「選手の喜んだ顔がうれしい」と話す。おいしい食事、楽しい食卓が、選手の心と体を育てている。
◆山梨学院高 1956年(昭31)創立。野球部は57年(昭32)創部。甲子園は今年のセンバツを含め春3度、夏8度出場。主なOBに明石健志(ソフトバンク)、松本哲也(元巨人)。09年春に清峰(長崎)を甲子園Vに導いた吉田洸二監督が13年(平25)4月に就任。学校所在地は山梨県甲府市酒折3の3の1。山内紀幸校長。
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(2019年3月14日付日刊スポーツ紙面掲載)