<週中ベースボール:横浜金沢V・ルークスの挑戦(3)>
少年野球がチーム減、選手減に悩むなか、発足2年で選手5人から46人に急成長した横浜金沢V・ルークス。その理由などを5回にわたって探っていきます。3回目は「保護者」がテーマです。
強制的な「お茶当番」は置かない
これまで何度か少年硬式野球のチームを取材したことがある。球場に着くと、お母さん方がすぐに飛んできて、お茶やコーヒーを出してくれる。関係者の座る席には、乾き物や甘いものなどのおやつも用意され、なくなるとすぐに補充してくれる。場内アナウンス、弁当運び、掃除、片付けもお母さん方の仕事だ。
横浜金沢V・ルークスでは強制的な「お茶当番」は置いていない。ある選手の母親が以前所属したチームでの裏話を明かしてくれた。
ある母親 監督、コーチのお弁当を買いに行ったり、食後のコーヒーを出すのは当たり前。誰々のコーヒーには砂糖多めとか、誰々はミルクだけとか、そんな細かいことまで、母親同士で競ったりしたんです。
笑い話ではない。監督やコーチに献身的に接するのが当たり前、まして自分の子供の活躍を願うなら、どこまでも尽くす。母親は「母親同士でどんどんルールや仕事をつくって、がんじがらめになりました」と振り返った。
こうなると親がしんどい。今春卒団した息子を持つ小島歌代さん(41)は、親の負担が大きいことを伝え聞いて、横浜金沢V・ルークスが立ち上がるまで、子供に野球をやらせることができなかったという。
小島さん 小1の時から子供が野球をやりたいと言っていたんですけど、親が大変と聞いて、チームに入れることができなかった。子供には我慢してもらっていました。
お茶当番だけでなく、練習や試合の送り迎え、監督やコーチへの謝礼など、保護者にかかる負担は大きい。澤中貴司監督(50)は以前所属したチームで、こんな話を聞いたことがある。
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