昨夏の静岡大会準優勝校・島田商の塚本浩平内野手(3年)が、雪辱を期している。遊撃のレギュラーとしてチームに貢献していたが、常葉大菊川との決勝戦でサヨナラ負けにつながるプレーに関わった。あれから1年、リーダーの1人としてチームを引っ張ってきた。昨年の悔しさを晴らし、名門を79年ぶりの甲子園へ導くつもりだ。
塚本は、昨夏の決勝戦を鮮明に覚えていた。同点の9回裏2死満塁。打席に入った常葉大菊川2番東虎之介(現北海道教育大札幌校1年)が初球をたたくと、打球は塚本の前へ。「スライスしていたので、体で止めにいった」が、打球は右すねに当たり、誰もいない三塁後方へと転がっていった。サヨナラ負けを確信し、頭の中は真っ白に。だが、直後にマウンド上で崩れ落ちた同学年のエース小林史弥投手(3年)の姿を見て、われに返った。
「あの瞬間は忘れられず、今でも夢に出てくる」と塚本。甲子園大会中には、テレビで常葉大菊川の試合を観戦。聖地ではつらつとプレーするライバルの姿を見て、悔しさとともに自らを奮い立たせた。新チームでは副主将に就任。前チームでは先輩に頼りきっていた姿勢を変え、積極的に多くの選手に声をかけるようになった。気の抜けたプレーに対しては、厳しく指摘することも増えた。
自分にも厳しく向き合った。昨秋結果を出せず、パワー不足を感じたことから冬に加圧トレーニングを敢行。食事量も増やした結果、体重が58キロから67キロへアップ。体が強くなったことで打球の飛距離も伸びた。それまで練習で1本も打てなかった本塁打を今春以降に4本放ち、成長を実感した。
その様子を見た池田新之介監督(41)から「塚本はこの1年、選手としても人間としても大きく成長してくれた」と絶賛された。それでも満足はしない。「昨年の悔しさを絶対に晴らしたい。今年こそ自分たちが甲子園でプレーします」。昨年やり残した大きな宿題。それを今夏にやりきる決意を示した。【河合萌彦】
◆塚本浩平(つかもと・こうへい)2001年(平13)12月8日、島田市生まれ。小3から島田イーグルスで野球を始めた。島田二中では2年秋からエース。島田商では1年秋に中堅手でレギュラーに定着し、2年春から遊撃へ転向した。右投げ左打ち。172センチ、67キロ。血液型AB。家族は両親と弟。
◆島田商 昨夏の準優勝メンバーが4人残る。中でもエースで4番の小林主将が、チームの大黒柱だ。切り込み隊長の増田、野手陣のリーダー塚本、パンチ力ある打撃が魅力の山本も昨夏を経験。悔しさを知る主軸の4人に期待が集まる。昨秋、今春は思うような結果が出ず、故障者も出て苦しんだ。だが、主力選手が調子を上げ、下級生も成長。万全の状態で一丸となり、今年こそ聖地への切符を勝ち取ってみせる。
(2019年6月29日、ニッカンスポーツ・コム掲載)