<高校野球千葉大会:習志野3ー2成田>◇22日◇準々決勝◇ZOZOマリンスタジアム
成田先発の杉田翔夢投手(3年)は習志野打線に8安打されながらも、粘りの投球で6三振3点に抑え、打線も優勝候補を1点差まで追い詰めた。
「習志野の飯塚修人投手に負けたくない気持ちで投げました。自分の力を出しきった結果。悔いはないです」と胸を張った。
成長のマウンドだった。1年秋、今とは別人の杉田がいた。練習試合での大量失点を理由に、県大会予選の前日、ベンチ入りメンバーを外された。悔しくて、グラウンドの隅で涙を流した。チームメートが気を使って優しい声をかけてくれる中、ただ1人、厳しい声をかけてきたのが1つ上の先輩で昨年のエース・仲沢龍良選手(青学大1年)だった。
「杉田、自分で立ち直れ。エースはマウンドでも、下を向かずにチームを引っ張るんだ」。
厳しい言葉に目が覚めた。メソメソ泣いてばかりいた秋。顔を上げるとチームメートは夏に向けた練習に力を入れていた。それを引っ張っていたのが仲沢だった。「自分だけじゃなく、他の選手のことも見て動いていた。あんなエースになりたいと思いました」。
1年冬からは、補食で体重を10キロ増やし、体幹と下半身が強化でウエートトレーニングを多く取り入れた。今春には力強い真っすぐに変化球のキレが増し、制球にも自信がついた。何よりも、マウンドでは堂々とチームを引っ張った。「1年秋の自分は、泣いている自分をみんなに見せていた。今は、感情を出さないようになりました」。
泣き虫エースが頼れるエースに成長し、センバツ準Vエースと投手戦を繰り広げた。
それぞれの思いを胸に成長を遂げる選手たち。先輩たちが残す姿が血となり肉となり、伝統として引き継がれていく。成田らしく力をつけていく選手たちの姿こそが、新たな伝統の継承なのだ。杉田は「この思いは古谷や後輩たちに託します」と話し、涙が止まらない古谷将也捕手(2年)の肩を笑顔でポンポンとたたいた。あのころの自分を思いながら。【保坂淑子】
(2019年7月22日、ニッカンスポーツ・コム掲載)