<高校野球大阪大会:履正社7-2金光大阪>◇29日◇決勝◇大阪シティ信用金庫スタジアム
履正社(大阪)が嫌なジンクスを打ち破って、同校初の春夏連続甲子園を決めた。
今秋ドラフト候補で4番の井上広大外野手(3年)が3戦連発となる同点弾を放つなど2安打1打点の活躍を見せ、金光大阪に7-2で勝利。野口海音(みのん)捕手、小深田大地内野手(2年)も本塁打を放つなど、鍛え上げた打力で3年ぶりに大阪大会を制した。
プロ注目のスラッガーが閉ざされた扉をこじ開けた。1点を追う4回。4番井上が変化球を完璧にとらえた。打球は大きな弧を描き、左翼席に飛び込んだ。「自分が打たないと厳しい試合になると分かっていた」。試合の流れが一変した。主砲に続けと、6番で主将の野口が勝ち越し2ランを放ち、この回3得点で逆転に成功。同校初の春夏連続甲子園に突き進んだ。
春の悔しさが原動力だった。センバツでは初戦で星稜(石川)と対戦。「高校四天王」の1人、奥川恭伸投手(3年)にチームは3安打完封負けを喫した。井上は無安打2三振。センバツ後も思うような結果が出ず、試行錯誤の日々だった。
新チーム結成から打撃のチームのイメージがついていたが、現実を見つめ直した。松平一彦部長(42)は「打つ、打つと言われてても、たいしたことないというのを数字で見せました」と言う。秋の大会のデータを基に算出した打率や本塁打数を掲示。歴代のチームとの差を比較し、差を明確に表すことで自分たちの立ち位置を自覚させた。春からは筋力トレーニングの時間を増やし、食事面の指導を徹底。打撃面では「対応力」をテーマに確実に仕留めることを目指してきた。
井上も「体の中心で打つように心がけた」と打撃向上に励んだ。この日の1発は3戦連続で今大会4本目。高校通算46号とした。同校OBで現ロッテの安田尚憲は3年夏に大会3本塁打で偉大な先輩を超えた。岡田龍生監督(58)も「あの1本がすごく大きかった」とうなずいた。
センバツ出場した年は不思議と夏の甲子園に進めなかった。野口は「指導者の方から言われて、悔しかった。この夏で、というのはあった」と発奮材料にした。大阪大会の7試合で80安打56得点。圧倒的な打力で、嫌なジンクスを打破した。井上は「春は悔しい負け方をした。僕らは校歌を歌う楽しさをまだ知らない。全力で1つずつ勝ち取って優勝したいです」と力を込めた。センバツは2度準優勝したが、夏は3回戦進出が最高。成長著しい4番を中心に、頂点を目指す。【望月千草】
◆井上広大(いのうえ・こうた) 2001年(平13)8月12日生まれ。大阪府大東市出身。南郷小でソフトボールを始め、南郷中では東大阪シニアで捕手。履正社では1年夏からベンチ入り。187センチ、95キロ。右投げ右打ち。
▽楽天愛敬スカウト(履正社井上の打撃に)「ナイスバッティング。ファーストストライクから甘い球を仕留められるようになった。体格もいいし、鍛えがいがある。右打者で長打を打てるのが魅力的」
▽履正社・清水大成投手(3年)(5回1/3を投げ3安打4四球2失点)「内容は最悪でした。まだ甲子園に行ける切符をつかんだだけなので、気を引き締めたいです」
▽履正社・岡田監督「春は良くなかったので負けをもう1回リベンジしようと言ってきた。子どもらに感謝です。彼らが本当に頑張ってくれている」
(2019年7月29日、ニッカンスポーツ・コム掲載)