短距離走は「硬く伸び縮みしにくい筋肉」を持つ選手の方が、長距離走は「軟らかく伸び縮みしやすい筋肉」を持つ選手の方がタイムが良いとの研究結果が、このほど発表された。

順天堂大大学院スポーツ健康科学研究科の宮本直和准教授らの研究グループは、筋肉の硬さと競技パフォーマンスとの関係について調査。その結果、筋肉の質と競技種目には適した組み合わせがあり、競技種目の特性によって、その組み合わせが異なることを明らかにした。

調査結果を発表する順天堂大大学院スポーツ健康科学研究科の宮本直和准教授
調査結果を発表する順天堂大大学院スポーツ健康科学研究科の宮本直和准教授

筋肉の伸び縮みやすさを計測

調査は、100メートル走、5000メートル走の公式記録を持つ20代前半の男性選手22人ずつと、運動習慣のない一般男性19人を対象に行った。着地時に伸び縮みし、短距離選手と長距離選手で速筋線維(白筋)と遅筋線維(赤筋)の割合(筋線維組成)が大きく異なる外側広筋に超音波を当てて、伸び縮みやすさを計測した。

従来、スポーツ選手の筋肉は「軟らかい方がいい」と言われてきたが、今回計測したのは触った時の軟らかさではなく、伸び縮みのしやすさ。グループの平均値を比較すると、短距離選手の筋肉は、長距離選手よりも軟らかかったが、タイムとの関連を見たところ、短距離選手は硬い筋肉の選手の方がタイムが良く、長距離選手はその逆という結果になった。

短距離選手では、硬く伸び縮みしにくい筋肉を持つ選手の法がタイムが良かった(左)が、長距離選手はその反対の結果になった
短距離選手では、硬く伸び縮みしにくい筋肉を持つ選手の法がタイムが良かった(左)が、長距離選手はその反対の結果になった

宮本准教授は「硬く伸び縮みしにくい筋肉の方が力を効率的に伝えやすいので、短時間の競技には向いている。しかし長時間の競技では、硬い筋肉だと力のロスが生じるので伸び縮みしやすい方がいいということだろう」と説明した。

短距離選手はストレッチしない方がいい?

また宮本准教授は「アスリートが高いパフォーマンスを発揮するためには、競技に合わせたトレーニングが必要だ」と見解を話した。例えば、ストレッチをすると筋肉が軟らかくなることが分かっており、短距離のような競技によっては、やることで不利になるケースもある。一方、筋トレを行うと筋肉が硬くなるので、長距離選手はやらない方がいいということになる。

今後、宮本准教授らは他の競技や選手、部位でも測定しながら検証を続けていく。「競技特性と個人の筋肉の質を考慮した『カスタムメイド型トレーニング法』を構築したい」と展望を語った。また、「現時点での結果はあくまでも成人でのもの。成長期のアスリートには当てはまらないかもしれない」とも付け加えた。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】