星稜（石川）の3年生が茨城国体で敗れ、高校野球を終えた。

全国的な名門にもかかわらず、肩肘張らない不思議な雰囲気を持つチームだった。主将の山瀬慎之助捕手（3年）の存在が大きかったように思う。チームのテーマ「必笑（ひっしょう）」を率先して体現した。

甲子園準優勝の進撃を支えた必勝の儀式がある。その名も「ワッショイ」。試合前日は、食事後にナインが地下駐車場で素振りをする。その最後に1人が指名され「ワッショイ」の掛け声に続いて応援歌を歌い、最後にギャグを披露する。ムードメーカー吉本有佑捕手（3年）が登板過多でネタが尽き、新ネタを繰り出してもウケなくなった。

主力クラスはやらない。だが、ネタ枯れに伴い、山瀬にみんなの期待が向くようになった。登板したことのない主将は「俺はやらんから。キャラ封印しているから」と断り続けていたが「じゃあ、甲子園の決勝の前にな」と約束。ついに1年間我慢してきたキャラ解放の時がやってきた。

決勝前夜、満を持してワッショイに初登板した。大きく「必笑」と書き込んだ仕込みパンツを披露して「明日も必笑～！」。大爆笑を勝ち取った。底知れぬポテンシャルを見せつけられた仲間からは「あいつはバケモン」と口々に感嘆の声が上がった。

「日本一になりたかった。奥川を日本一にしたかった」と甲子園決勝後に悔やんだ山瀬だったが、国体もしっかり笑顔で終えた。次なる戦いの舞台はプロだ。プロ顔負けの鉄砲肩が高く評価されているが、“必笑”を貫いたメンタルも山瀬の魅力になるだろう。【柏原誠】

（2019年10月1日、ニッカンスポーツ・コム掲載）