名古屋学芸大管理栄養学部の学生たちは、隣接する愛知学院大男子バレーボール部の食事サポートをするという全国的にも珍しい取り組みを行っている。
食事を担当するのは、アスリートの栄養サポートサークル「NSTA(N=nutrition、S=support、T=Team for、A=Athletes)」。バレー部寮の食事作りを始めてから4年目で、現在は約130人のメンバーが3~4人1組でシフトを組み、30人分の朝食、夕食を週5~6日、交代で提供している。活動は、あくまでも学生主体。藤木理代教授は「時々、相談には来ますが、彼らで考えてしっかり頑張っています」と目を細めた。
西日本インカレ2連覇、春秋リーグV
愛知学院大は、ワールドカップにも出場した日本代表ミドルブロッカー山内晶大(25=パナソニック)の母校で、6月の西日本インカレでは2年連続2度目の優勝。秋の東海大学リーグ戦では7戦全勝で優勝し、18年ぶりの春秋連覇を達成するなど伸び盛りのチームだ。今月開幕する全日本インカレでは、昨年の2回戦進出を上回る成績を目指しており、これらの快進撃の裏には、食事の充実があると言っても過言ではない。
NSTAは選手の体組成を計り、平均値を出して献立に落とし込んでいる。代表の成松翔さん(3年)によると、「バレーボールは長身選手が多く、運動量も多いけれど、リベロ以外のポジションでの運動量にそれほど差がない」として、1日に必要なエネルギー量を一律、一般男性の1.5倍の約3500kcalを目安に設定している。
1日3500kcalを目安に朝夕食事作り
献立はこれまでの蓄積があるため、月1回程度のローテーションで提供。また選手からのアンケートを元に新メニューも開発する。
意識するのは、「疲労回復のためのビタミンB群と貧血予防のための鉄強化」。不足しがちな野菜も多く摂れるよう心がけている。
週末に試合が行われるシーズン中は、金曜日の夜から「試合食」に切り替える。白米のご飯にうどんをプラスして炭水化物の割合を増やし、脂質を抑えて戦える体に。試合当日には補食として、1個100グラムのおにぎりを100個程度作って渡す。具は梅カツオ、サケゴマ、ツナしょう油などのまぜご飯。これらの細やかな対応に、選手からは「いつもおいしいご飯をありがとう」「サポートのおかげで練習を頑張れる」といった感謝の声もかけられているという。
成松さんは、「元々スポーツ栄養にも興味があったし、大量調理の技術の向上にもなる。将来の仕事を考えた上でも非常に役に立っている」とやりがいを感じている。1~2年に1度は選手対象に栄養セミナーも実施。何よりも、大きなケガをした選手がいないのが手応えの1つと感じている。選手たちの活躍が、毎日の食事作りの大きな原動力になっている。
■高校時代にスポーツ栄養興味
成松さんは埼玉県本庄市出身。野球、陸上、バレーボールなど多くのスポーツを経験し、食事の大切さに触れたことから、高校時代に管理栄養士を目指すことを決めた。同過程のある学校は女子大が多いため、男子が通える学校を探すうち、オープンキャンパスでNSTAのブースを訪れ、名古屋学芸大への入学を目指した。とはいえ、男子の割合は1割で、NSTAの男子部員も8人だけ。まだまだ女子が多い世界だが、スポーツ栄養への関心度は若い男子にも広がっている。
【アスレシピ編集部=飯田みさ代】