新型コロナウイルスの感染拡大は、アメリカでも深刻な状況になっています。ロサンゼルス(LA)在住の千歳香奈子通信員が、アメリカの今を伝えてくれました。
日用品や食料品がなくなる
アジア圏を中心に新型コロナウイルス感染拡大が広がり続ける中、国民の多くが対岸の火事と思っていたアメリカの雰囲気が激変したのは今月11日、米ナショナル・バスケットボール・リーグ(NBA)ユタ・ジャズのルディ・ゴベア選手に陽性反応が出てシーズン中断が発表された後だった。ほぼ時を同じくしてハリウッド俳優トム・ハンクス夫妻がSNSで自ら感染したことを公表し、その直後にドナルド・トランプ米大統領が国家非常事態を宣言したことで一夜にして世界が変わった。
パニックに陥った人々が食料品や日用品を求めて大型量販店やスーパーに殺到。早朝から長蛇の列ができ、トイレットペーパーや消毒液、石鹸、冷凍食品や缶詰、パスタなど保存食から生鮮食品までほぼ全ての棚が空になった。
LAでは感染拡大を食い止めるため、ドライブスルー・宅配・持ち帰りを除く全ての飲食店、バーの営業が禁止され、学校も一斉休校。大学はオンライン授業に切り替わった。カリフォルニア州では50人以上の集まりも禁止され、スポーツ大会やイベントは軒並み中止や延期を強いられた。
それでも感染者数が急増するLAでは、19日にLA郡が不要不急の外出を控える緊急命令「Safer At Home(自宅でより安全に)」を発令し、ほぼ同時にカリフォルニア州も州全域の住民に対して「Stay At Home(自宅待機命令)」を出した。これにより、住民の暮らしは一変。直接生活に支障をきたさない衣料品店などの営業は禁止され、映画館を含む全ての娯楽施設、スポーツジムも閉鎖された。
食料品や日用品、医薬品の買い出しや病院に行くことは認められるが、10人以上で集まることは禁止で、他人と6フィート(1.8メートル)離れるというソーシャルディスタンスが義務付けられた。働く親を支えるため保育園の営業は認められているが、遊具施設の利用は禁じられた。
主要スポーツ中止や延期も屋外での運動は推奨
大リーグをはじめとする主要スポーツ界では次々と今シーズンの延期や中止を決め、スポーツ大国アメリカでスポーツのテレビ中継がない異常事態となった。普段は若者で賑わう公園のバスケットボールコートやテニスコートにも人はいない。しかし、政府は屋外での運動は禁止しておらず、LAのゴルフ場は今も営業している。
カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は記者会見で「外出禁止とは家に閉じこもれと言うことではありません。ソーシャルディスタンスを保った上で積極的に外に出て、新鮮な空気を吸いましょう。ジョギングや自転車に乗ること、運動もして良いです。ハイキングをするのも良いでしょう」と語り、屋外に出て体を動かすことを推奨している。
子供たちは公園の遊具施設を利用したり、大勢の友人で集まって遊ぶことはできないが、入園無料で開放された国立公園でハイキングをしたり、海岸沿いの遊歩道でローラースケートや自転車に乗って楽しむ姿も見られる。また、住宅街でも犬の散歩やジョギングする人も増えた。
今後1カ月は自宅待機と学校閉鎖
外出禁止令は少なくとも4月19日まで続くが、今後8週間でカリフォルニア州の住民の56%に当たる2550万人が感染する可能性があると専門家は指摘しており、すでに4月末までの休校を決めた学校もある。フロリダ州マイアミでは学校が休みになった多くの若者がビーチに繰り出してパーティーをする様子が伝えられ、批判が殺到して22日にはビーチが閉鎖された。
ここLAでも今後1週間、雨予報が出ていたこともあり、一部のビーチに若者が殺到して日光浴をしていたとして、「家族ら大切な人の命を守るために一人一人が分別ある行動を」と呼び掛けている。しかし、今後少なくとも1カ月は続く自宅待機と学校閉鎖による子供たちへの精神的ケアの必要性も叫ばれ始めている。
【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】