新型コロナウイルスは、アメリカ人の日常生活にも大きな影響を及ぼしている。
日本ではマスク不足が深刻になるなど、多くの人が外出時にはマスクを着用しているが、元来マスクを着用しないアメリカでは、これだけ感染が拡大した今でもマスク姿の人はまばら。先月末に、ロサンゼルス(LA)をマスク姿で歩いていたら「コロナウイルス持っているのか?」と冗談交じりに言われるほどだったが、ようやく1週間ほど前から、マスク姿で買い物をする人をちらほら見かけるようになった。
マスクに「予防効果なし」
しかし、今もマスクは「病人が他人にうつさないためにするもの」であり、「予防効果はない」というのが基本的な考えだ。マスク文化がないため、日本に比べると元々販売されている種類も数も少なく、感染拡大の前にアジア系の人たちに買い占められて店頭から消えていたとも言われている。現在は一般向けだけでなく、医療現場でも深刻なマスク不足が問題となっており、政府がマスクの寄付を呼び掛ける事態になっている。
そんなアメリカで、感染予防のために最も有効だと言われているのが「手洗い」。日本人に比べると手洗いの頻度が少なく、洗い方も雑な印象だったが、今は1日に何度も石けんで手を洗うようになった。
「ハッピーバースデー」を2回歌う
専門家は「ハッピーバースデー」の歌を最初から最後まで2回歌いながら、手全体を少なくとも20秒間洗うよう指導しており、テレビでも正しい手洗いの方法が度々紹介されている。ハリウッド俳優らトップアーティストがSNSで手洗い動画を配信したり、LAの高速道路の電光掲示板には、交通情報の代わりに「石けんで手を洗おう」と表示されたり、手洗いを推奨する対策が取られている。
使い捨てゴム手袋を着用する人も
これによって、消毒液に加え、手洗い用石けんも品薄状態に。また、ショッピングカートやガソリンスタンドの給油での感染率が高いと専門家が注意喚起し、ゴム手袋の着用や使い捨てペーパータオルの利用を呼びかけたことで、外出時に使い捨てのゴム手袋を着用する人も急増している。
ビデオチャットなどで会話
パーティー好きなアメリカでは、ソーシャルな場として様々な集まりやパーティーが頻繁に行われていたが、現在は原則として仕事でもプライベートでも10人以上の集まりが禁止され、他人と6フィート(約1.8メートル)離れるソーシャルディスタンスシングが義務付けられている。そのため、最近は直接顔を合わさずにビデオチャットなどで会話を楽しむ人が増えており、誕生日パーティーを開けなかった子どもの家の前を車の中から「ハッピーバースデー」と叫びながら通過する人々の様子などもメディアで紹介されている。
ハグや握手での挨拶はしない
さらに、ハグや握手の代わりに、拳や肘を突き合わせて挨拶する人も。米疾病対策センター(CDC)による感染が広まる速度を緩める作戦は、アメリカ人の日常生活における習慣や意識にも大きな変化をもたらしている。
【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】